61 / 118
楽園と崩壊と
47 亡命の失敗2(ドロシー視点)
しおりを挟む※胸糞があります。妊婦さん系胸糞が苦手な方は回れ右。
************************************************
それからはどうやって教会まで辿り着いたか覚えていない。きっとクリスがわたくしをここまで運んだのだろう。
わたくしたちを襲った者たちは隣国のカタルーニャ聖王国の聖騎士たちだった。
何故聖騎士が……?
ああ…そんなことどうでもいい……お、お、お…お父様…お父様、が……!
お父様は聖騎士たちの手で殺された。「穢れた王国の民に浄化を!」と狂ったように叫びながら。生きたまま体を下から大きな杭で串刺しにされ、立てられた。お父様の苦悶の呻きと狂ったような聖騎士たちの声。お父様の従者や騎士たちも同じように串刺しにされ、晒された。
その聖騎士たちは、お父様たちへの悍ましい行為が終わった後、一斉にわたくしを見た。
わたくしはクリスに庇われながら叫んだ。「やめてください!お腹に子供がいるんです!!」と…。
聖騎士たちは怯んだ。そう、わたくしは知っていた。聖王国の教義では、妊婦は最も大切にされる。聖騎士たちはヒソヒソと何かを話し合い、わたくしたちを城壁の中で解放した。
わたくしが覚えているのはここまでだ。
「何が…起こって、いるの……?」
呆然と呟いたわたくしに、水を持ってきたシスターが言う。
「私たちは罰を受けているのです。聖女様を蔑ろにし、傷付け ーーー 追放した罰を」
「………せい、じょ…?」
「ええ、聖女様です。議会が先日、追放した聖女様。あのお方は本物の聖女様でございました。そして神が降臨し、仰いました。『聖女は私の子供である。愚かな人の子たちよ、罰を受けよ』と。神の言葉は瞬く間に世界中に広がりました。そうして私たちは ーーー 」
「もういいわ!」
まるで聖書でも読み聞かせるようなシスターの言葉を遮る。
聖女?聖女ですって?
議会が、追放、した……聖女。ノア・ヴォルテッラ?まさか、そんな……!
「貴女もどちらのお嬢様か存じませんが災難でございましたね」
「え…ええ……」
……シスターにはわたくしがペトレルラ公爵家の娘だとは気付かれていないようだ。
逃げなくては。
でも……どこに…?
程なくしてクリスがわたくしの所にやってきた。
「ドロシー様、ここは聖女教の教会です。……一度屋敷に帰りましょう」
95
お気に入りに追加
2,343
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる