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北の地へ
14 先代公爵の誤算(ペトレルラ先代公爵視点)
しおりを挟む王弟アレクシスが逃亡した。
強国ベローナを捻り潰し、快進撃を続けて。あと一歩で王都だという土地で。
随行していた兵によれば、『オデッサに亡命』すると言っていたらしい。
オデッサに……。
ーーー 恐らくはアレクシスはもう生きてはいないだろう。
「糞…!!」
ワイングラスを叩き付ける。酔えるものか!こんな状況で!
ああ、こんな筈ではなかった。
【聖女】のあの子供をオデッサなどに本当に送る気はなかったのだ!
オデッサに送ると見せかけて監禁し、囲い込んで有効活用するつもりだった。システムのバッテリー?そんなもの、異世界から召喚すれば替えはいくらでもいる。
ああ、そうだ。私なら、陛下より【聖女】を巧く使って見せたのに!
あの子供は ーーー ノア・ヴォルテッラは本物だ。
私は見たのだ。あの子供が……【聖女】が奇跡を起こす瞬間を。
あのヴォルテッラの屋敷で。【聖女】は翼を捥がれた小鳥を二度、三度撫で……まるで幻術のように翼が再生した。【聖女】の足元に美しい色彩が溢れ、小鳥が再び飛び立つ。
【聖女】の足元に弾けた色は ーーー 色とりどりの『花』だった。
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それなのに。
それなのに。娘が棄民の御者を手配し、本当にノア・ヴォルテッラを死地に送ってしまうなんて……!
ノア・ヴォルテッラがオデッサへ追放となり、様々な計画が狂い始めた。
『女神の瞳』を持つ、あの卑しい棄民の血を引く小娘は子を成さず逃げ。
【ヴァンダルの軍神】とまで言われた王弟は【聖女】に殉じ。
王都は維持管理システムのエネルギーが枯渇した。
ああ、早く次の【聖女】を女神様に召喚していただかねば…。
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