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北の地へ
06 本日も晴天なり(隠密護衛A視点)
しおりを挟むパカポコと馬車がのんびり進んでいく。とても罪人用の護送車とは思えない長閑さだ。
王都の外はいつも冷たい雨か雪が降っている印象なのだが。
「ノア様のおかげですかねえ。これなら旅も楽そうだ」
Bが笑う。
そう。これから死ににいくような旅なのに悲壮感がまるでない。それは俺たち隠密護衛がノア様の聖女としての能力を知っているからだろう。
愚かな国だ。ま、俺の生まれ故郷なんだけどな。
「それにしても驚いたわ。まさか貴方たち『影』が表に出てくるんですもの」
「もう隠密行動も取る必要がないですからね」
そう、俺たち『影』はやっとノア様にご挨拶ができる。
「ノア様、お初にお目にかかります。……と言っても、貴方の護衛は11年やってるAことアーロンです」
「あっ!ずるいぞA!ノア様、私はBことビルです!私もノア様が子供の頃から護衛をさせて戴いております!」
御者台のAが負けじと声を張り上げる。ふふっ…とノア様が笑ってくださった。
「だから初めて会った気がしなかったんだね?いつもありがとうアーロンさん、ビルさん」
「恐れ多い!『さん』は、いりません。ぜひビル、とお呼びください」
「ぜひアーロンお兄ちゃん…と!」
「図々しいんだよお前は!!アレクシス殿下に言いつけるからな!?」
「やめてそれはやめて死んじゃう!!」
「…ふっ…ふふ…っ、あはは……!うん、これからもよろしくね、アーロン、ビル」
くっ……アアアアアアアかっわええええええ!!ノア様のはにかみ顔かっわええええええええええええ!!
濡れたような大きな瞳の下の泣き黒子。長い睫毛に縁取られた少し不安そうに見上げる緑の瞳。吸い付きたくなるような、ぷるんとした薄紅色の唇。触りたくなるまろやかな頬。
たまんねえええええええ!!よかった!アレクシス殿下が恐ろしい人で良かった!至近距離でやられたらマジ道踏み外すわコレ!!
こんな色気だだ漏れだからおかしな噂が一人歩きしちゃったんだよ!
役得だあ!と舞い上がっていたら、数時間後には馬に乗った副隊長ご夫妻とCが合流した。
さよなら…俺のドキドキポジション……。
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