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序章
02 聖女の追放(デルフィーヌ視点)
しおりを挟む話がある、と戸籍上の夫に言われて休憩することにした。
正直面倒だが、水分と糖分を体が欲していたので素直にお呼ばれすることにした。うん、美味しい。さすがはペトレルラ公爵家御用達の紅茶だ。小さな茶菓子を口に入れる。本当は甘いものはそんなに好きではない。疲れを取るだけなら角砂糖でも良いのだ。だが公爵家の茶菓子が角砂糖では体裁が悪い。
ああ、本当に無駄なことだ。
「聖女ノア・ヴォルテッラが……いや、もう元聖女になるのか。ノア殿がオデッサに行くらしいね」
……………………は???
「え…なんの、お話ですの?」
「聞いてなかったのかい?議会で決定したらしいよ?なんの成果も出せない聖女は不要。ただの金食い虫だからね。君の両親の『聖女の世話係』という立場も終わるわけだ」
ノアが?不要?金食い虫?オデッサに追放といえば聞こえはいいけれど、それは事実上の『処刑』だ。
「だが私は寛大な夫だからね。君がお願いするなら、離縁せずにこれまで通りの婚姻生活を続けてあげよう」
そんなのどうでもいい!ノアは!?ノアは……
「………聖女様は、どちらに…?」
「……今頃、オデッサに向けて護送されてるんじゃないかな?」
ぷつん。
私の中で何かが切れた音がした。……血管じゃないといいなあ。
今すぐ目の前の男を殴り殺したいのを我慢する。そう、ママが言ってたじゃない!殿方の前では か弱い被害者で居なさい。同情を買いなさい。反撃は裏からでもできるのですから、と。
「…さよう、で……ございますか……」
「………!」
私はホロリ、ホロリと涙を流して見せた。ママ直伝、化粧の崩れない泣き方だ。
「い…いや、デルフィーヌ!!その…大丈夫だ!離縁はしない!周りになにを言われようと、私は君を……!」
「いいえ、離縁してくださいませ」
「は!?」
「わたくしは貴方様の妻である前に、あの子の……ノアの姉なのです…」
す…っと私は短剣を取り出す。そして、今朝侍女が美しく結い上げてくれていた髪に刃を当てる。
ざくり。ざくり。ざくり。
「デルフィーヌ!!」
「お元気で、旦那様。わたくしはあの子と共に逝こうと思います」
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