【異世界大量転生4】役に立たない淫売聖女(♂)は極寒の地に追放されました。※なお、英雄王弟は即追いかけて行った模様です。

とうや

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序章

02 聖女の追放(デルフィーヌ視点)

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話がある、と戸籍上の夫に言われて休憩することにした。

正直面倒だが、水分と糖分を体が欲していたので素直にお呼ばれすることにした。うん、美味しい。さすがはペトレルラ公爵家御用達の紅茶だ。小さな茶菓子を口に入れる。本当は甘いものはそんなに好きではない。疲れを取るだけなら角砂糖でも良いのだ。だが公爵家の茶菓子が角砂糖では体裁が悪い。

ああ、本当に無駄なことだ。


「聖女ノア・ヴォルテッラが……いや、もう聖女になるのか。ノア殿がオデッサに行くらしいね」




……………………は???




「え…なんの、お話ですの?」

「聞いてなかったのかい?議会で決定したらしいよ?なんの成果も出せない聖女は不要。ただの金食い虫だからね。君の両親の『聖女の世話係』という立場も終わるわけだ」


ノアが?不要?金食い虫?オデッサに追放といえば聞こえはいいけれど、それは事実上の『処刑』だ。


「だが私は寛大な夫だからね。君がするなら、離縁せずにこれまで通りの婚姻生活を続けて


そんなのどうでもいい!ノアは!?ノアは……


「………聖女様は、どちらに…?」

「……今頃、オデッサに向けて護送されてるんじゃないかな?」


ぷつん。


私の中で何かが切れた音がした。……血管じゃないといいなあ。

今すぐ目の前の男を殴り殺したいのを我慢する。そう、ママが言ってたじゃない!殿方の前では か弱い被害者で居なさい。同情を買いなさい。反撃は裏からでもできるのですから、と。


「…さよう、で……ございますか……」

「………!」


私はホロリ、ホロリと涙を流して見せた。ママ直伝、化粧の崩れない泣き方だ。


「い…いや、デルフィーヌ!!その…大丈夫だ!離縁はしない!周りになにを言われようと、私は君を……!」

「いいえ、離縁してくださいませ」

「は!?」

「わたくしは貴方様の妻である前に、あの子の……ノアの姉なのです…」


す…っと私は短剣を取り出す。そして、今朝侍女が美しく結い上げてくれていた髪に刃を当てる。


ざくり。ざくり。ざくり。


「デルフィーヌ!!」





「お元気で、旦那様。わたくしはあの子と共に逝こうと思います」













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