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【兄視点】
しおりを挟む人生何が起こるかわからない。
私の前世、望月悠は身に覚えのない逆恨みから命を落とした。全く身に覚えのない女性関係で刺された。思えば幼い頃から異性に囲まれていた。それが普通だと思っていた。死の間際に『異性と気安く仲良くなってはいけなかった』と悟った。
転生した先でも私は異性に囲まれた。だがもう二度と間違えない。触れてくる女性には「自分を大切にしてくれ」と断りを入れたし、「付き合ってくれ」と言われても安易に頷かないようにした。婚約者だけを大切にしたつもりだったが、彼女は私が王太子でなくなるとすぐに離れていった。女性とはこういうものだ。決して我々男性とは同じだと思ってはいけない。女性はドライで現実的だし、男性はなんだかんだ言いながら夢見がちでうじうじしているものなのだ。
王太子からただのスペアの王子に転落した私は『金毛羊』の儀式の最中に捕虜になった。共に捕まった弟と引き離され競りにかけられて ーーー なぜか6人の魔族の女性の共有物になった。ヒートアップした競りの最中に「このままじゃ破産するから共有物にしよう」と談合が行われたらしい。かくして私はペットのような扱いになり、弟は何故か魔王ベルゼブブの『嫁』となっていた。
その後、弟の神殿での扱いに魔王ベルゼブブが激怒して報復をおこなったり、転生者と判明した私と聖女候補ダリアが仲間として正式に認められ、家を与えられ職に就いた。
俺に与えられたのは教職だった。まあ教師 ーーー といっても9割方が子守りだ。魔族の…老白と呼ばれる上位魔人の産む子供たち。未成年の獣人に似た子供たちを預かり、食事をさせ、文字や文化、簡単な計算などを教える。学校というより託児所……か。
その児童預かり所に、最近奇妙な客がやってくる。
蝋より白い青褪めた肌と、闇よりなお深い黒瞳と黒髪。背筋が凍り付くような美貌。初めて会った時の不思議な既視感。歳の頃は10代にも見えるし初老に見えることもある。彼はこの世界に7人居る魔王たちの祖父らしい。
「またこんな所に紛れておったのか、羊」
彼は薄く微笑んだ。
彼が来訪すると、子供たちは全員居なくなる。母親が慌てて迎えにくるのだ。やるべき子守りがなくなってしまった俺は仕方なく……本当に仕方なく、茶と茶菓子などを出す。
いつだったか、「どこかでお会いしていましたか?」と訊くと「さあて、何処だったかいのぅ?」と古めかしい口調で惚けられた。
しとしとと降る雨を2人で眺める。俺はただの一般人から王子になり、奴隷になって教師になった。人生何が起こるかわからない。
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