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【陽咲視点】
しおりを挟む一口食ったアキが固まった。体がぶるぶる震えている。いや、痙攣している。いやあ、途中まで良い匂いさせてたんだがなあ…。やっぱり奏メシは奏メシなんだよ、うん。
「アキ、ほら、ペッしろ。ペッ」
「んー!んんんんん~!!」
おお、飲み込んだ。食べ物を吐き出さないのはえらいぞ?眷属たちがススーッと現れて、甘い果物ジュースを置いていく。アキはアルコールの匂いが苦手だから素面だ。つらいだろうなあ、ハッハッハ!
「うべえええええええ!!まじゅいいいいいいいいい!!」
泣きながらジュースをがぶ飲みする。
「………うっ…うう…………異世界のご飯…まずい……やっぱりおれ…果物しかいらない…」
おっと。アキにさらなるトラウマを与えてしまったか…。あー、モールドレのゴブリン飯ってかなり強烈らしいからなあ…。
「………ねえ、ひいくん……これって…」
「嫁の飯が今日もまずい!」
「まずいってレベルかよオオオオオオオ!?」
「独特な…お味……だねえ…?」
「……あっ、レタス美味しい。僕この単品でいい。お塩くださーい!」
『……なんだこの微妙なマズさ…』
「ふええええええ…」
兄弟たちはレタスと酒で口の中をリセットしている。えええ~って言いながら目を泳がせる嫁が可愛い。もう一口掬って奏に食わせると、奏も固まった。
「………オッフ…隠しきれない隠し味……!」
「隠し味ってほんの少しだぞ?今日のこの量で言うとチョコは一欠片、シナモンは小匙1/3くらいだぞ?チリコンカンがシナモンの効いたチョコレート菓子みたいな味になってるじゃねえか!?しかもこの焦げ臭さ……インスタントコーヒーぶち込みやがったな!?」
「ええ~……いっぱい入れたら美味しいかなあ…って思って…」
「過ぎたるは及ばざるが如し、だな」
とりあえずもうひと匙、奏の口に突っ込んで、危険物処理を再開する。
「………えー…それ全部食べるんだ…」
『え……お前おかしいよ…マジで……』
「愛か…!?愛なのか!」
「おれ…初めてヒナを尊敬するわ……」
「変われば変わるもんなんだねえ…」
「愛って偉大だね?」
俺のささやかな復讐が終わるのを見計らい、メルや眷属がつまみを運んでくる。
「奏、こっちきて座れ」
「ええ~…」
「嫁を見にきたんだ。じっくり眺めて早く帰れ」
********************
※千早は読唇術と空中筆記で会話しています。
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