【7人の魔王5】魔王様の食卓 〜今日も嫁(おれ)の飯がマズいらしいが、愛があるなら乗り越え(あきらめ)てくれ〜

羊の愛情クッキング☆アサリのパエリア編「大好きだよ陽咲、俺と結婚してください」

「…………まじゅい…」

「えっ…マジでー？」


今日も陽咲が眉を顰める。ええ～…ちゃんとレシピ通り作ったのにぃ！？


「なんか……洗剤の味がする…」

「えっ、アサリ洗った時に入っちゃったかな？」

「……は？お前、アサリを洗剤で洗ったの！？」

「う…うん。だって汚れてるって書いてたし…」

「ああ……うん、汚れてるよ。海の底に潜ってんだもんな。わかるよ…わかるけどさあ！」


アーンしてアサリを口に入れられる。確かに……洗剤の味が………おええええ…！


「米……煮えてねえ…」

「えっ、だって下は焦げてるよ！？20分煮たよ！？」

「食ってみろ」


口に入れられた米は味がぼんやりしててポリッて音がしそうなくらい煮えてない部分とグチャッてしたお粥のなり損ないみたいな部分があった。えええええ…。


「この茶色いとこな？ここだけ塩っぱい」

「あっ、コンソメ溶けてないのかー」

「溶かして入れろ！！」

「いや、溶けると思って」

「溶けるけど混ざらねえんだよ！」


飾りのレモンを口に突っ込まれた。みぎゃあ！酸っぱい！！

俺が酸っぱいレモンのくし切りに苦戦している間に、陽咲は黙々とパエリア(のような何か)を口に入れる。完食と同時に水。いや…まあ、ほんと……お粗末様でした…。

食べ終わった小さなフライパンを片付けていく眷属。今日は2足歩行の狼だ。彼はメルの息子らしいが先日のミケリーノの購入者だったために大幅に降格。花形の遊撃隊隊長から厨房の見習いに転落してしまったらしい。

いつものようにスープ系と山盛りパンが準備される。今日はクリームシチューらしい。以前と違うのは、あの断罪事件から陽咲が俺の膝に乗ってくるようになった。


「あーん？」

「ん。」


クリームシチューの鶏肉を陽咲の口に運ぶ。


「……ん。んまい…」

「……あれ？陽咲、もしかして……前より味がするようになった？」

「ん…？ああ、段々とな？おっ…お前の…おかげ、かも………しれない…な？」

「わあ！すごいな！良かった！俺の料理だけじゃなくてもっと美味いもの食えるようになるな」

「………」

「…陽咲？」

「味覚が……戻ったら………」

「え？」

「味覚が戻ったら……もう…作りたくない…か？」

「えー…」

「お…お前の飯は…その……まずいけど…嫌いじゃないんだ。ま…毎日食いたいし、食ってて飽きないっていうか…まずいけど…その………」

「あは。プロポーズみたいだな陽咲」

「えっ……ぷろぽー…ず……？」


んっ？

みるみる陽咲の顔が耳まで真っ赤になる。えっ…ええ！？ねえ陽咲サン？俺って君の嫁だよね！？


「……プッ…プロポーズとか！そんなわけあるかッ！お前からならともかくっ…！」


えっ。プロポーズしていいんだ？やっちゃう？やっちゃうよ！


俺はそっと陽咲の手を握る。


「じゃあ俺からプロポーズするね？」

「えっ…は……え？えっ…？？？え、ちょ……！？」










「大好きだよ陽咲、俺と結婚してください」