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【聖女候補視点】
しおりを挟むわたしには前世の記憶がある。
それが前世かどうかは怪しいんだけど、ここではない世界で生きた記憶がある。とても平和で、とても自由で、とても窮屈な世界。
大学を出て社会人になって。いわゆるブラックもブラックの純黒企業だったけど給料だけは非常に良かった。その有り余る給料で『推し』を推しまくったのだ。
『ピニャとカルヴァのぼうけん』
あれこそがわたしの聖書だった。尊い。ひたすら尊い。巷ではカルヴァ×ジンとかイェーガー×ピニャとか流行っていたけれど、わたしの最愛は王道のカルヴァ×ピニャだった。最推しはカルヴァ。あのほわわんとした雰囲気でお腹の中は真っ黒。ピニャ以外はゴミ屑以下という態度。堪りませんな!!
でもそれも、ずっとずっと過去の話。
前世を思い出して「過労死転生キター!」って思ってたのに魔王軍の捕虜からスタートとかハード通り越してベリハ?アルティメット級!?競りにかけられて、聖女候補のわたしは高級お肉になるらしい。つらい。お肉つらい。せめて痛くないように殺して欲しい。
出荷される日を薄暗い厩舎で待っていると、肉屋らしき巨大猫がわたしを引き摺って連れて行く。ドナドナド~ナ~ド~~ナ~~~♪……つらい。
引き摺り出された場所は広い部屋だった。『えっけんのま』みたいな場所。あの襲撃の時に捕まった人たちが集まってるみたいだ。
「………………ッ!!!???」
そこでわたしは見つけてしまった。
ピニャとカルヴァを。
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