【7人の魔王5】魔王様の食卓 〜今日も嫁(おれ)の飯がマズいらしいが、愛があるなら乗り越え(あきらめ)てくれ〜

猫にはモンプチ、あなたには甘くて軽い愛の言葉を

「おはよう、陽咲！今日も可愛いね」

「………っ…！」


朝イチから口説く！昨日も口説いたけど今日も口説く。だって口説いて良いってお義祖父様から許可が出たんだも～ん♪


「そっ…そんなの誰にでも言ってるんだろ！！『ひつじたにかなで』は女優、ニュースキャスター、アイドル…って美女美少女を取っ替え引っ替えだったじゃねえか！」


Oh…


どうしてくれるんだ前世の俺。めちゃくちゃプレイボーイだと思われてんじゃん…。


「いやあ…えーと、前世のアレね……俺、自分から口説いたことないから。自分から口説いて同棲したのって、三毛猫のパトラさんだけだし」

「えっ…」


パトラさんは俺がデビュー当時に住んでたマンション一帯の女王様だった野良猫だ。見事な美貌とプロポーションで一目惚れし、毎晩モンプチを貢いだ。タマの伝説も常備した。俺ん部屋ちに住んでもらうまで1年かかった。


「ね…ねこ…！？」

「そう、猫。今まで彼女っぽかったのは、なんか飲み会で友達になって何故かマンションに押しかけられた挙句スクープされたり、喋ったこともないのにブログでコラ画像晒されたり、お試しで付き合って1ヶ月で別ふられたり…」

「……女運悪すぎ…」

「だよねー？だからね？俺が本気で口説いてるのはパトラさん以外は陽咲だけなの」

「猫の次かよ！？」

「パトラさんより愛してるよ！」

「愛が猫の毛ぐらい軽すぎる！！」


ツッコミながらも拒否はされなくなった。プイッて顔を背けられるけど、耳が赤いから照れてるんだと思う。あー、可愛い。俺の旦那可愛い。ペロペロしたい。やったら多分殴られるけど。

陽咲はきっと俺のことが嫌いじゃない。でもね、俺みたいにキスしたいなあとか、あわよくばその先まで進もうとかそういう感情じゃない。俺が想像するに、陽咲は『ひつじたにかなで』の作品が好きで、まあその延長で拗らせてるんじゃないかな？

そういうフワッとした感情を無理矢理方向転換させようと考える下衆い俺。絵本とか児童書とか書いてたけど、中々にイイ性格って言われてた。でも俺の書いてた話って結構自分勝手で下衆い話だったんだけど……まあそこがウケて子供から大人まで楽しんでもらったっていうか。




うむう…ライバルは前世の俺とか…！なんという不毛。