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羊の愛情クッキング☆スクランブルエッグ編 「玉子って割ると殻が入るモンだろ?」
しおりを挟む目が覚めるとだだっ広い天蓋付きベッドの端っこにちんまり丸まって寝てた。アマルテイアの眠り方を体が記憶しているらしい。そのうち真ん中に大の字になって寝るようなるんだろうけどな。
アマルテイアの習慣で、朝の禊の時間に目が覚めちまった。まだ暗い。もったいねえ。寝直すか…。
「嫁くん、おっはよおおおおお!」
……寝直せなかった…。扉をぶっ壊す勢いで邪悪なヒロイン、メルが突撃してくる。わかってたよ…奴隷にプライバシーはない。わかってたけどさあ!
「嫁くん!実験その2と3よ!台所行って陽咲様のご飯作って!」
「えっ…」
「いきなりお味噌汁なんて言わないわ!最初はスクランブルエッグから!ほらっ!起きて起きて!!」
「えっ…その……俺、料理したことなくって…」
「大丈夫!スクランブルエッグなんか玉子ほぐしてフライパンで掻き混ぜるだけじゃない!」
えええ~…。
前世は外食かコンビニ飯か彼女飯だったんですけどぉ。しかも昨日気づいたけど、ちょっと食べ物の記憶がないんだよねえ。例えるなら、無音の動画で異国の料理を知ってるだけのような……うん、本人も何言ってるかわかんねえんだけどな。
早く早く!とメルに急かされて厨房に急ぐ。夜明け前から起きてたらしいコックコートの獣人たちは、俺を見ると何故かすげえ嬉しそうな顔をした。
「クケッ!ケケェー!(伴侶様!おはようございます!)」
「ウンニャア!ウグゥルルニャ(おはようございます!魔導コンロの準備も出来ております)」
……うん、やっぱり全然わっかんねえ~…。彼らはもしかしなくても『獣人』じゃなくて獣に近いのか?
調理台の上には玉子にボウル、皿に菜箸にフライパン…何故かザル、調味料っぽい液体と粉各種。よ…よーし!やるぞお!昨日メルのやることは見てたんだ!できるはず!そう、俺はやればできる子!
鼻息荒く玉子を割る。
ぐしゃっ。
………うん、大丈夫だ、問題ない。玉子って割ると殻が入るモンだろ?カルシウム、カルシウム!とりあえず3個くらい割って、大きめの殻は指で摘んで取っておく。菜箸で適当に掻き混ぜてフライパンに入れて火をつける。ここから掻き混ぜ……って、あれ!?くっつくよ!?は!そうだ、油!油入れなきゃ。油……こ、これ、かな?ちょこっとでいいけど……あっ!いっぱい入った!……うん、大丈夫大丈夫、問題ない。胡椒っぽいのと塩入れて完成~⭐︎なーんだ!簡単じゃん?
カリカリと菜箸で削り取りながら皿に移す。香ばしそうな茶色だろ?照りもあるぜ!ドヤァ!って背後を見ると……あれえ?
メルは両手で顔を覆って泣いてるし、獣人たちはプルプル震えてたり俺と目を合わせなかったり。ええ~?なんでぇ???
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