腐女神さまのいうとおり1〜亡国王子と死神辺境伯〜

亡国王子、前世を語る

フィアツェンとセックスして、それから毎日致してるけど日常は変わらない。第二厨房のみんなと美味しいものを作って、フィアツェンとランチして、夜ご飯も美味しいねって一緒に食べて、一緒に眠る。それに時々の大人のキスと、夜のアレが加わっただけだ。

フィアツェンは俺が小さい頃からヒノモトの話を聞きたがっていたけど、初めて『俺の家族』のことを聞かれた。なんかね、聞こうとしたら一花姉が怖かったからずっと聞けなかったんだって。

まあ俺もあんまりはっきり覚えてるわけじゃないけど。

家族構成は美形の両親2人に姉が1人、弟が2人。家の隣には、両親の親代わりの先生が住んでた。っていうか、先生の道場のある隣に両親が強引に家建てちゃったんだって。

どこにでもある、普通の家族。

共働きの両親と、年子の姉弟たち。塾とか行かなくても一花姉は成績トップだったし、三鷹くんは剣道で全国大会で優勝とかしちゃったり、四祇君はお母さんに似て奉納舞とかできる特別な子だった。……え？俺？俺はなんていうか………うん、あんまりパッとしない感じでね？それなのになんか年に数回ストーカー騒動とか、気持ち悪いラブレターとかいっぱい貰ってたなあ…。ぼーっとしてて隙があったからだろうね、きっと。

春にはみんなでお花見して。夏は海。秋は紅葉狩り。冬は神社にお詣りかな？両親も姉弟も忙しそうだったけどそれなりに仲良くいろんなところに行って楽しんでた。

……最後の記憶はね、なんか俺の成人式のスーツを選ぼうってことで、両親とテーラーに行ってる車の中。テーラーだよ、テーラー。もうね、お父さんもお母さんも張り切っちゃって、オーダーメイドだよ。高いのにね？

その車の中で、俺の記憶はぷっつり途切れてる。

なんか一花姉に聞いても答えてくれないし、先生に聞いても「うむ、そのうちな」としか言わないし。でもねえ……なんかね…？






思い出しちゃいけない ーーー そんな気も、するんだよねえ。