腐女神さまのいうとおり1〜亡国王子と死神辺境伯〜

亡国王子、着飾る

成人の儀は前日から大変だった。

普段は1人で入っているお風呂も双子が本気で磨きにきた。運動不足で凝り固まった腕や足をぎゅぎゅぎゅーっとされたり、お顔をむきゅーっと引き上げるマッサージされたり。モニモニされた後は頭皮が剥けるかと思うくらい頭を洗われて、なんか良い匂いのするリンスっぽいのをつけて頭をモミモミ。気持ちいー…と思ったら朝だった。寝落ちしたらしい。

起きたらもっちもちのモチ肌だった。すごい。双子すごい。

「式典が終わればお昼ご飯ですよ」って言われて差し出されたのはカロリーバーみたいなお菓子。今日は朝ごはんを食べる時間がないらしい。いやその…ちょっと寝過ぎた感はあるけど……うん、爆睡したもんね。

お菓子はもち麦みたいなやつといろんなナッツを、溶かした飴でギューッと固めてるやつ。おいしーい！一口より小さいそれをモッチモッチカリコリ食べさせてもらいながら、今日の晴れ着の着付けがどんどん進んでいく。

白い晴れ着はアレスゲーテの伝統らしい。フィアツェンの15歳の時の姿絵を見せてもらったけど、それはもう神々しかった。フィアツェン少年、マジ美少年！……でも俺がこのピラピラ着るのぉ…？と思ったら、押しかけ……げふん、はるばる西方諸国から移住して来てくれたソワヨさんが「お任せくださいッ」って……。

出来上がった晴れ着は、かっちりしたロングコートみたいな感じだった。首元は詰襟。フィアツェンの軍服に似てる。うんうん、かっこいい！！レースもフリルもリボンもちょっと…って言ったらちゃんとその通りに作ってくれた。しかも生地はかっちりしてるのに動きやすくて柔らか～い！


「……ああっ！神よ…！！」


あっ。なんかソワヨさんが五体投地した。やめてやめてやめて。こわいやめて。


『あらぁ♡良いわ！良いわぁ！！ソワヨ、お前はやっぱりよくわかっているわ！受けにレースやフリルはいらないわ！ペアルック！これこそが至高よ！！』


ペアルックって……一花姉？言葉古くない？あっ…そう？いいんだ……？


迎えにきたフィアツェンが一瞬固まって、「う…うん、俺の妻は今日も美しい」って。お耳が赤いとか可愛すぎなんだけど、フィアツェン！？