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亡国王子、育つ
しおりを挟む俺がアレスゲーテに来て7年が経った。あの6年前の謁見から何かあったかといえば何もない。強いていえば俺の背が伸びたことがビッグニュース。
お隣のオストハウプトシュタットは疫病から始まって、干魃、蝗害、地震に王都の大火災で、今年は火山が大噴火したんだっけ?もうほんと呪われてるんじゃない?……あー、心当たりがあるなぁ…。フィーリプさんの背後にいるアレとか、ショコラーデとか、一花姉とか……。うん、女性、怒らせちゃダメ、絶対。
アレスゲーテはもうなんだか申し訳ないくらいに平穏なんだけど……ねぇ?
そんなことをつらつら考えながら、ヴィドスが作ってくれたサンドイッチを籠に詰める。俺の分で外せないのはたまごサンドとカツサンドでしょー?あっ、ローストビーフサンド!むむむ!サバサンドもある!チキンにエビカツ!?あああああ…選べなぁい!!
「アールツナイ、カットしてやるからフィアツェン様と半分こしたらいい」
「わあい」
ヴィドスも俺もだいぶ打ち解けた。ヴェルニおじいちゃんが俺を結構雑に扱ってくれるから、歳の離れた弟みたいな感じに収まったらしい。敬語もやめていい感じ。いえーい。それを見たショコラーデが「アタシにも気安くして!」とコウモリ姿で詰め寄ってきたからなし崩しにOK。ずるいよねぇ?もふもふ最高です。
「アールツナイ様、こちらもどうぞ。洋梨とヨーグルトのムースです」
すすす…とデザートを渡してくれるのはファビアンくん。ファビアンくんの敬語は取れなかったけど、だいぶ仲良しになれたとは思う。今のファビアンくんは初めて会った時とお顔が違う。気弱なとこを隠すためにジルベールメイクしてたんだってさ。素顔は高校生くらいに見える童顔の可愛い感じだ。ヴィドスと同じ歳っていうからもう30歳超えてるんだけど……うーん、異世界の神秘!
美味しそうなサンドイッチを籠にぎゅうぎゅうに詰め込んで。デザートも袋に入れたらショコラーデが肩に乗ってくる。
残りを祭壇にお供えするとシュッて消えた。ええ~…まだ「ご飯ですよ」って言ってないのにぃ!一花姉、お行儀わるぅい!
「いってきます!」
「あいよ、いってらっしゃい」
「寄り道すんなよー?」
「「いってらっしゃいませ」」
ヴィドス、ヴェルニおじいちゃん、パメラおばあちゃんにファビアンくんが手を振ってくれる。
さて、フィアツェンにランチのデリバリーだぁ!
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