腐女神さまのいうとおり1〜亡国王子と死神辺境伯〜

とうや

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亡国王子、ホラーな求婚を断る 3

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「おすとはうぷとしたとのおうじょさん、おれはひあてんさんのつまなのであなたのおっとにはなりません。ひあてんさんもあなたをつまにするつもりはないとおもいます」

「はぁ?何を言ってらっしゃるの!?わたくしが結婚してあげると言っているのよ?返事はハイか喜んで!の二択でしょう!」

「じしんがあることはけっこうですが、おれはひとのはなしをきかないひとはきらいです。だいきらいです。やくそくがまもれないかたもなかよくできません。おかえりねがいます」


嫌い!と念じながら王女さんの目を見ながら言う。この目が魔眼だって言うなら、通じると良いなあ。


「えっ……ぁ…え……う、ぅそ、で…しょ……?ね?うそよね?や…やだ……ヤダヤダヤダ…嘘…!!そんなはずないわ!わたくしは妖精姫なのよ…!わたくし、わたくし…は………」


がくりと膝を突く王女さん。よし、通じた!はーい!警備の人!一名様ご案内!


「おすとはうぷとしたとのおうたいしさん、のしろはここです。そちらには。そのようなことをいうためにじぶんのちちおやをというのならば、わたしはあなたをこころのそこからけいべつします」

「……っ!アールツナイ!あなたは私の弟なんだ!だから…っ」

「 ーーー だから、なんなのですか?わたしをえーでるはうぷとしたとからすくいだしてくれたのはひあてんさんで、あなたはなんです?おすとはうぷとしたとのおしろで、わたしがおうじょさんにころされそうになったのを、だまってみてましたよね?やめろとさけんでくれたのはこくおうさまだけでしたよね?あなたはあんぜんなばしょから、りすくをさけてりえきだけをえようとしている。おうぞくとして、じきこくおうとしてそれはとてもただしいのかもしれません。ですが、そんなあなたをどうやってしんじろと?わたしは、あなたにひとかけらのこういももてません」

「………っ…!」


ジィ…っと見つめると、王太子さんもガクガク震えながら項垂れた。よし、警備の人!もう一名様ご案内!!

フィアツェンさんを見ると、優しい顔でうん、と頷いてくれた。良かった。間違ってはないみたい。

ショコラーデさんをそっと肘掛けに置いて、オストハウプトシュタットの国王様のところに行く。俺が自力で歩いて見せたのは初めてだからか、おお…とかそう言う感じでギャラリーたちがヒソヒソした。


「おすとはうぷとしたとのおうさま」

「……ぅ……あ…ぁあ…」


俯いて顔を上げなかった王様がのろのろと、けれどしっかりと俺を見た。

ああ…やっぱり……。

オストハウプトシュタットの王様は、アールツナイくんのお父さんは、呪術と薬で肉体と精神の自由を奪われ、 ーーー 舌を切り取られていた。

ねえ、普通ここまでするぅ!?大方、俺と王様が文通でもしてると思ったんだろうけど、お手紙は一方通行ですからぁ!


「おうさま、おてがみありがとうございます」


手を取り、治れー、良くなれー!と念ずる。だってこの人、巻き込まれただけだもんねえ?フィアツェンさんがオストハウプトシュタットで謁見許可したのもこの人なのにねえ?


「わたしのみをあんじてくださって、ありがとうございます。わたしはげんきです。ひあてんさんにもみなさんにも、よくしていただいています。ははも……ぺるせぽねも、よろこんでいるとおもいます」

「…あ……ぁあ…る……ペルセ、ポネ…!ああ……ああ…!」


ポロポロと泣きだす王様の後ろに、透明な女の人が見える。桃色の髪と、緑色の瞳。蹲って嗚咽を漏らす王様の背中から覆い被さるようにして。




ああ、そんなところにいたのか、ペルセポネさん。






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