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亡国王子、視察についていく 3
しおりを挟む丘の向こうに青い水平線が見えた。ふおおおおおおお!お約束だが叫ばせてもらおう。
「うみだああああああああ!!」
海だよ、海!!
「海が好きか、アールツナイ?」
「すき!!」
特に海産物が!!!泳ぐのはいまいちなんだけど。だってベタベタするじゃない?髪とかゴワゴワになるし。挙句に前世は焼いても日焼けしない体質だったから火傷みたいに真っ赤になってたんだよね。だからみんなで海に行った時はお母さんとパラソルの下でのんびりしてたっけ。………うん?お母さん、と…………。
あれ?
お母さん…お料理が上手で優しくて怒ると怖くて神楽坂家のヒエラルキーのてっぺんで………あれ?あれれれれ???なんで?どうして?
お母さんの顔が ーーー 思い出せない…。
ゾクッとした。あれ?おれ、なんでそんなことがおもいだせないの?
一花姉、三鷹君、四季君。姉弟は思い出せる。でも ーーー なんで?お母さんの、顔と…お父さんも……どんな顔だった?美男美女のおしどり夫婦で……あれ?なんで?
『 ーーー 二葉ちゃん…』
「一花姉?」
『思い出せなくていいの。それは多分 ーーー 転生の弊害よ。たまに…結構いるの、そういう人が』
「……そう?」
『そうよ』
「…そっかぁ」
一花姉が言うならそうなんだろう。あー、びっくりした。
急に青くなったりぶつぶつ言ったりする俺をフィアツェンさんが心配そうに見ている。大丈夫だよー、おかしくなってないよー!
もー、一花姉、フィアツェンさんにもわかるように話してよ!内緒話、ヨクナイ!
『わかったわ。これでいい?』
「うんうん」
フィアツェンさんが『あっ、女神と交信してたのか』って顔で納得してくれた。
『ああ、そうそう二葉ちゃん、言い忘れてたけど、もうすぐお客さん来るわよ?』
「ふえ?」
『誰かは来てのお楽しみ♪お刺身捌いてもらってねっ♡』
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