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亡国王子、王都アストレアに到着
しおりを挟むそこから1週間くらい走ると、大きな壁に行き着いた。壁の前には大勢の人たちが並んでいて、どうやら壁の向こうに入るための検査みたいな感じかな?フィアツェンさん率いる大きな馬軍団は隣の大きめの扉を潜って中に入る。並んでる人たちからジロジロ見られちゃった。違うよー!ズルじゃないよー!(多分)
でもあれは狡いとか羨ましいの目じゃなかったなあ。怯えてた?んー、まあ怖いかなあ。こんな大きな馬に乗った集団だもの。
「まずは俺の王都屋敷で綺麗にしような」
「ぅあい」
お屋敷?お風呂あるかな?お風呂あるかな?
お風呂大好きのヒノモト人。ウキウキしたけどお風呂はないらしい。がっくり…。
「アールツナイが湯に浸かるのが好きならアレスゲーテで作らせよう」
「ほんちょ?」
「ああ、本当だ。我がアレスゲーテでは山脈の地中から湯が噴き出すことがある。肌に良いとされるそれを運ばせよう」
わあい!温泉だあ!
あったかいお湯で体を拭いてもらいながらまだ見ぬ温泉に思いを馳せる。ツルツル系か、ヌルヌル系か、はたまた硫黄泉系?あああ、全部好きぃ!楽しみだなあ。
白い布から、なんだかやたらと綺麗な刺繍の入った黒い服に着替える。目の次は右足が膝のところまで生えてきはじめてる。例によって痒い。めちゃくちゃ痒い。
「薫衣草と薄荷の塗り薬です。痒みが和らぎますよ」
リンクさんかレヒトさんかが生えてきている足に痒み止めを塗ってくれた。「掻いてはいけませんよ?」と優しく諭されて首をこっくり頷ける。確かに少しスーッとして痒みがマシになったかも。それにこれ、良い匂い。ラベンダーとミントかな?
ほんと良くしてもらうなあ。一花姉に脅されたとはいえ、こんな壊れた人形みたいな俺なのに。
「あ…あにょ、にぇ?」
「はい」
「あぃがちょう…」
リンクさん(レヒトさん?)は目を何度か瞬かせた後ににっこり笑った。それはもう、嬉しそうに。
「恐悦至極にございます。アールツナイ様にはフィアツェン様と末永く、仲睦まじく過ごしていただけるよう、私どもがお仕えさせて頂きます」
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