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死神辺境伯、嫁(予定)を見せびらかしにいく
しおりを挟むパカラッパカラッと軍馬が進む。いや本当はそんな軽快な音じゃないけど。フィアツェンさんの領の兵隊さんたちはみんなゴッツイ馬に乗っている。まず脚が太い。首も胴も太い。ヒノモトの北の大地で見た道産子馬みたいだ。あれが荷物を引くんじゃなくて、鎧を着てドカドカドカガッシャンガッシャン動く。乗ってる兵隊さんもフルフェイスの鉄の鎧着用。フィアツェンさんは真っ黒い鎧で、これまた真っ黒い、一際大きな馬に乗ってる。名前はゴンザレス。うん、誰だ名前つけたの。ネーミングセンス仕事しろ。
そのうるさい音にも慣れてきた頃、ひょろっとした馬に乗った人たちが現れた。
鎧の上に黄色と青のサーコート。3人いる1人は鷲と王冠の旗を掲げている。さぞや戦場では目立つだろう。的になりたいマゾな人?戦闘狂?
「止まれィッ!アレスゲーテ辺境伯軍!勅命である!止まれ止まれィ!!」
ウワア、めんどくさそう。俺の頭上でチッて舌打ちが聞こえたよ舌打ちがぁ…。
声の大きな目立つ人たちの言うには、「勝利を陛下に報告する前に帰路に着くとは何事か」ってことらしい。えー、戦争ってそんな感じ?一回お家帰ってゆっくりして疲れを取ってから身なりを整えて、改めて「勝ちました」じゃ駄目なんだぁ。学校の部活動とは違うんだなぁ。
散々大きな声でお城に来いって叫んで、派手なサーコートの人たちは帰って行った。
「……如何致しましょう」
「……ああ、面倒だ。このままアールツナイを連れて行こう。俺の天使を見せびらかして結婚と独立を宣言する」
「ああ、良いですね。きっと褒美と言ってもアレですよ」
「そうそう、あの高慢ちきな姫との婚約。寒気がしますね」
「それで子供が生まれたら、実質アレスゲーテは王家の直轄地ですね」
「……勘弁してくれ…」
フィアツェンさんがぐりぐりと俺に頬擦りした。お髭がちょっと痛いです。
「では行くか。麗しの張りぼての都アストレアへ」
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