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亡国の秘宝、手首が生えた

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オッス、オラ二葉!今世はアールツナイっていうお薬に生まれたらしい。今はお馬に乗ってものすごい速さで移動中。オラわくわく……うーん、しないなあ…。

爆速で走っている割には揺れない。ほら、よく馬で走ってる時に喋ると舌を噛む…とか言うよね?どうやら俺を抱っこしてくれてるフィアツェンさんの魔法らしい。

魔法だよ、魔法!

すごいね!一花姉が女神様って聞いた時に薄々気付いてたけど、これって異世界転生?剣と魔法の世界とか、どこのRPGだよ。まあアールツナイわたしの体を刻んで食べたら傷が治るとかファンタジーというかグロ系ダークファンタジーだよね。

その剣と魔法の世界、ファンタジーモノでのお約束の『魔力譲渡』ができるらしい。《治癒》を使って使って枯渇した俺に、移動がてら魔力を分けてくれるフィアツェンさん。……あれ?もしかして優しい?俺に対しては初めからにこにこしてるし。

……うーん、夢じゃなければ「結婚しよう」って言われたんだよね?俺もあの時色々とテンパってたからスルーしてたけど。一花姉の腐の呪いだったらまあ申し訳ないって思うけど、素でこの状態の俺にプロポーズしたんだったらとんでもない悪趣味だ。猟奇趣味?それとも人外がお好きですか?まあとりあえず俺、人間だけど。

じっと顔を上げてフィアツェンさんを見る。蕩けるような微笑みが返ってきたから悪趣味確定。うーん、それにしても顔が良い。外国の人気俳優さんのようだ。異世界だけど。

フィアツェンさんの領地、アレスゲーテに移動中、フィアツェンさんはあれこれと俺のお世話をしてくれた。柔らかく煮た、なんかトロッとしたのをスプーンでひと匙ずつ食べさせてくてたり。食べたら出るわけで、シモの世話もさせちゃったよ。フィアツェンさんは多分結構偉い人なんだよね。だけど嫌がる気配どころか嬉しそうにお尻とか拭いてくれた。恥ずかしさと有難いを通り越して狂気を感じるね。同じ顔した2人のお付きの人も、そんなフィアツェンさんを見てにこにこしてるし。どういうこと!?

あー、せめて手が欲しい。片手でいいから!一花姉!!

心の中で懇願すると、『生えて欲しい部分にキスをおねだりするのよ!か、わ、い、く、ねっ♡』と神託が下る。こっちにも狂気を感じる。


「ひあてんしゃん」

「うん?」


にこにこにこにこ。うわあ、居た堪れない…!


「こ…ここ……」

「ん?」


俺は左手を、ここ、ここと動かす。


「ここ、にぇ?」

「うん」


にこにこにこにこにこにこ。


「きっ…きちゅ、ちて?」

「はぐぅっ…!?」


急にフィアツェンさんが胸を押さえて蹲った。えっ、ど…どどど…どうしたの!?


「フィアツェン様っ!?」


お付きの人とか兵隊さんたちが慌ててやってきた。違う!違うよー!俺、毒なんか盛ってないから!


「ぐぅっ…い、いや、大丈夫だ……問題ない…いやアールツナイが可愛すぎるのが問題だが大丈夫だ」


大丈夫なのそれ!?


お付きの人と兵隊さんたちは『スンッ』ってしてすぐ解散した。


「アールツナイ」

「ぅあい」


ちゅっ。


俺の左腕を、こわれものでも扱うように触ってキスをする。うーん、狂気。でもなんだかむずむずするから信じていいんだよね、一花姉?その後もフィアツェンさんは腕といわずほっぺたとか顔とか頭とかにチュッチュチュッチュしまくった。




次の日、左手首から先が生えた。異世界の神秘、すげえ。










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