腐女神さまのいうとおり1〜亡国王子と死神辺境伯〜

とうや

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【フィアツェン視点】

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エーデルハウプトシュタットの王太子が隠し通路に逃げ込んだ。そう報告を受けて暗く狭い通路を進む。隠し通路は黴臭く、どこからか腐臭も漂っていた。

この狭さでは剣を振るうのは難しいだろう。魔法で仕留めるしかない。度重なる強行軍で兵は疲弊し魔力も尽きかけている。2人の側近もヘラヘラ笑ってはいるが限界が近い。王太子が大勢の護衛を連れていないことを女神に祈る。


「(……フィアツェン様)」

「………………」


側近が囁く。足音は……ひとり…か?そうか、僥倖だ。王太子はたった1人で敗走している。なにか荷物でも抱えているのか、疾走してはない。足音を抑えて走ると、王太子と思しき男は予想通り荷物を抱えていた。

馬鹿な男だ。荷物さえ抱えていなければ逃げ切れたものを。

忍び寄る俺たちに気付いた時にはもう遅い。振り返った王太子の胴体は風魔法で真っ二つになった。ドサリ、と王太子の体と荷物が落ちる。撒き散らされる血と臓物。荷がごろりと転がった。


「…………………」


人間、だった。王太子が運んでいたのは小さな人間。だがおかしい。人間にしては小さすぎる。。足で転がすとその奇妙な短さの原因がわかった。



それは両脚がなかった。ころり、と転がる。右腕も無い。左腕は手首の付け根から欠損している。ざんばらに切られた頭部に見えたのは、震えが来るほどに澄んだ深い緑の瞳。片方だけの目で、は俺を見た。


「え…なにこの可愛い生き物……!?」


何故かそんな言葉が口を衝いて出た。我ながら正気の沙汰じゃ無い。色々と部位欠損した人間だ。顔立ちは愛らしいがまだ幼いと言っても良い。顔の半分は汚れた包帯で隠れていて、多分片目もないのだろう。荷物のように運ばれていた、子供。それが血と臓物に塗れてじっとこちらを見ている。

痛ましい、とか、哀れだと思う前に、愛おしいと思ってしまった。可愛らしい。なんて可愛らしいんだろう…!?そうか、これが可愛いという感情か。愛おしいという狂おしさか。うん、よし……


「結婚しよう」

「「「はい???」」」


側近2人と、子供の声が重なる。



ああ……声まで愛らしいなんて…!これが『運命』というものだろうか?












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