【7人の魔王3】ひとでなしの恋

ひとでなしと仕分け3

脱げ、と命じられた少女は跪いたまま震えた。プライドの高いフォルカポッジョの王族。それもきっと第一王女…。

俺の眉間に知らずと皺が寄っていたようだ。可愛らしく唇を尖らせながら紫苑が俺の眉間を指で突いた。


「父さん、今はそういうのやめて？父さんなら服だけ残してパパッとできるでしょ？」

「ええ～？観察記録つけようと思ったんだけどねえ？」

「辱めてどういう行動に出るかとか観察するみるのやめて。ハルが嫌がってるじゃない」

「おやおやぁ？嫁くんは元奴隷のくせにお優しいんだねえ？」

「まったくね？これだけ虐待されたら普通は性格歪むんだろうけどねえ？甘いったら…。でも、僕はそんなハルが好き。そんなハルだから好き。そんなハルでも大好き。……それにハルに女の裸とか見せないで。ハルはもう僕以外には勃たないと思うけど。思うけど！でもやっぱりそれでも嫌！」


う…なんか……色々と…すまん…。


「ふっふっふ……愛されてるねえ嫁くん。息子が幸せそうで何よりだよ。…良いだろう、私は息子には甘いんだ。観察記録はそっちの小さいのでつけることにしよう」

「え…！？」


少女が勢いよく顔を上げる。


「やめて！話がちが………ひっ！！」

「ねえさま！！」


少女の周りに夥しい数の小さなガラスの板が浮かぶ。ゆっくりとクルクル回るガラス板。髪が。頬が。指先から。少女が消えていく。ばさり、と少女の纏っていた薄汚れたドレスと髪飾りだけが残された。


ああ、そうか。これが ーーー 『コレクション』か。


「あっ、ね…え、さま…ねえさま……あ……あ…うわああああああああああああああああああ！！」


少年が叫ぶ。そのまま眷属を振り切って邪神に突進した。


「ヴィー」


アリトさんの指がリードから離れる。ヴェクター元王子が突進する少年を抱きとめた。


「～～！！…なせっ、はなせえええええ！！ねえさま！ねえさまをかえせええええ！！」

「エリオット！よせ！エリオット！！」

「はなせうらぎりもの！！おまえもあくまとおなじだ！ねえさま！ねえさま！！どうして！？ねえさま！！」

「黙るんだエリオット！！アビゲイルの犠牲が無駄になる！！」

「……っ！…う……ぅ……っ、あ…あ、………あああああああああああああああ！！！」


「……『私』さま」


コツリと靴音をたてて、アリトさんが邪神の前へ進み出た。跪き、服従の姿勢を取る。


「これは私に飼育させて頂けないでしょうか？お望みならば躾と、詳細な観察記録も」

「ふうん？ま、いいよ？許可しよう。君は紫苑くんのお気に入りだからねえ？本当は《真祖プリモジェニター》の君が良いんだけどねえ？仕方ないよね。……ああ、もし死んだら、死体でいいからくれないかな？」

「お戯れを」


邪神が笑う。






人の良さそうな笑みがこれほど恐ろしいと思ったことはない。