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ひとでなしと嫉妬
しおりを挟む異世界である大日本帝国風の『座敷』はこのエルドラドでも少し変わっている。畳という文化のないこの世界の常識から見れば、床に座って持て成すなど自由な遊牧民くらいしかやらない。
ゆったりとしたシタールの音色に合わせて、美しい少年少女が囁き合うように踊り、絡み合い、思わせぶりに上座の男に視線を投げる。彼らからすれば、紫苑を呼ぶほど金を持っている男に気に入られ得意客になれば…上手くいけば身請けされて愛人にでもなれれば御の字なのだ。どうせ紫苑は固定の馴染み客は取らない。セルヴァンスや楼主に叱られることはない。
紫苑はふわりとした笑顔で酌をしている。踊りや他のものには目もくれず一心に男を見る姿に勘違いをする者は多いだろう。本人は「お仕事だからね」の一言で片付けてしまうのだろうが。
胃がムカムカする。やはりアリトさんに俺の食事は質素にしてもらうように頼もう。あの人も紫苑も、セルヴァンスまで俺に大量に食わせようとするのは何故なんだ。
酔いが回ってきたのだろう。男が紫苑を抱き寄せ唇を寄せる。紫苑は小さく笑い声をあげて男の唇を手で塞いだ。
「お酒が過ぎましたかねえ?」
「ふふ…良いでしょう?今日は3回目ですよ?」
「ああ、もうそんなになります?床を用意させましょう。……気に入った娘はおりますか?」
「3回目ですよアスモデウス殿?」
「ああ……でもねえ?困りましたね。お代が足りないですよ?」
「……は?」
「僕を水揚げするのなら、白金貨一千枚は持って来ないとねえ?」
「…………え…、水、揚げ?」
紫苑は笑った。
水揚げとは、遊女たちが客に初めてを捧げることだ。…………………え……?つまり……
ゴクリと男が唾を飲み込んだ。
紫苑は……
男の顔が欲望に染まる。手が裾の合わせに滑り込み
ブツン、と俺の中で何かが切れた音がした。
認識阻害の布と頭巾を毟り取り立ち上がる。紫苑を男から引き剥がして抱き上げた。
「……ハルさん?」
「帰るぞ、紫苑」
「えええ…」
大股で座敷を出る。背後が騒がしいが知ったことか。
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