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イリスとギルドレッドは幼馴染である。
しかし、この6年はそれぞれ寄宿学校・騎士学校への入学等でまともに顔を合わす機会などなかった。
二人の再会の経緯には、こんなことがあったのである。
「ねえねえイリスちゃん」と、母であるシャンジェリーヌが猫撫で声で私を呼んだ。
「なんですか?お母さま」
「お母さまとマイラ(ギルドレッドの母親)ね、ずっとずーっと前に自分たちの子どもをくっつけたら親戚になれるわねって話ししてたの」
そこで、イリスは察した。なにか、やな予感を感じ取った。しかし、彼女はただ母親の言葉に耳を傾け続けた。
「今年でギルドレッドも騎士学校を卒業して、来年には正式に家督を継ぐみたいなの。だからねーー」
あなた、ギルドレッドと結婚なさい。
ほらきた。
イリスは内心そう思った。
幼馴染だからと、必然的に仲が良いと思うなかれ。
イリスは少し、いや、結構ギルドレッドのことが苦手だった。
いたずらを仕掛けてくるのは当たり前。必ずギルドレッドの仕掛けたいたずらで悲鳴をあげていたこちらに、良い思い出などほとんどないのが実情だ。
そんな奴と結婚なんか、どうかしてる。
お母さまには悪いけれど、これは絶対回避しないと……!
そうして、イリスは静かに決意した。
ーーしかし、イリスの決意も虚しく見合いはセッティングされ、直前まで知らされなかったイリスは慌てた。
侍女たちの着せ替え人形にされた挙句、今はドレッサーの前でああでもないこうでもないと装飾具を付けられたり外されたり、髪を結われたかと思えば元に戻される。
「ちょっと!お母さま!これは一体どういうことですか⁈」
「あら、なんのことかしら」
うふふ~とにっこり笑うお母さまに少しイラッとする。
絶対わかってるでしょ!
もういいわ。やってやろうじゃないの。
こんなお見合い壊してやる!
「もう知りません!」
イリスは侍女たちを押しのけ真っ白なワンピース姿のまま部屋を飛び出した。
……かと思えば、早速壁にぶつかった。
「ぶふっ」
ちょうど部屋を訪ねようとしていたのだろうその人にぶつかったのだ。
「ご、ごめんなさ…」
「イリス…?」
「え…?」
えーっと、、、アナタハダレデスカ?
私がぶつかったのは白い正装をした若い男。
隣に私の親友がいれば、黄色い声をあげていただろう顔の整い具合の良さだ。
このとき、『この人、これからなにか大事な行事に参加するのかなぁ。』くらいに軽く考えていた私を叱りたい。はやく逃げろ。と言ってやりたい。
今更こんな状況の中で逃げ切れるわけもなく、私の無駄なあがきはここで終わることに気づくのは、数十秒後。
しかし、この6年はそれぞれ寄宿学校・騎士学校への入学等でまともに顔を合わす機会などなかった。
二人の再会の経緯には、こんなことがあったのである。
「ねえねえイリスちゃん」と、母であるシャンジェリーヌが猫撫で声で私を呼んだ。
「なんですか?お母さま」
「お母さまとマイラ(ギルドレッドの母親)ね、ずっとずーっと前に自分たちの子どもをくっつけたら親戚になれるわねって話ししてたの」
そこで、イリスは察した。なにか、やな予感を感じ取った。しかし、彼女はただ母親の言葉に耳を傾け続けた。
「今年でギルドレッドも騎士学校を卒業して、来年には正式に家督を継ぐみたいなの。だからねーー」
あなた、ギルドレッドと結婚なさい。
ほらきた。
イリスは内心そう思った。
幼馴染だからと、必然的に仲が良いと思うなかれ。
イリスは少し、いや、結構ギルドレッドのことが苦手だった。
いたずらを仕掛けてくるのは当たり前。必ずギルドレッドの仕掛けたいたずらで悲鳴をあげていたこちらに、良い思い出などほとんどないのが実情だ。
そんな奴と結婚なんか、どうかしてる。
お母さまには悪いけれど、これは絶対回避しないと……!
そうして、イリスは静かに決意した。
ーーしかし、イリスの決意も虚しく見合いはセッティングされ、直前まで知らされなかったイリスは慌てた。
侍女たちの着せ替え人形にされた挙句、今はドレッサーの前でああでもないこうでもないと装飾具を付けられたり外されたり、髪を結われたかと思えば元に戻される。
「ちょっと!お母さま!これは一体どういうことですか⁈」
「あら、なんのことかしら」
うふふ~とにっこり笑うお母さまに少しイラッとする。
絶対わかってるでしょ!
もういいわ。やってやろうじゃないの。
こんなお見合い壊してやる!
「もう知りません!」
イリスは侍女たちを押しのけ真っ白なワンピース姿のまま部屋を飛び出した。
……かと思えば、早速壁にぶつかった。
「ぶふっ」
ちょうど部屋を訪ねようとしていたのだろうその人にぶつかったのだ。
「ご、ごめんなさ…」
「イリス…?」
「え…?」
えーっと、、、アナタハダレデスカ?
私がぶつかったのは白い正装をした若い男。
隣に私の親友がいれば、黄色い声をあげていただろう顔の整い具合の良さだ。
このとき、『この人、これからなにか大事な行事に参加するのかなぁ。』くらいに軽く考えていた私を叱りたい。はやく逃げろ。と言ってやりたい。
今更こんな状況の中で逃げ切れるわけもなく、私の無駄なあがきはここで終わることに気づくのは、数十秒後。
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