48 / 68
探し人《夢》【18】
しおりを挟む
アイシアナは来た道を帰ってきていた。
声が聞こえた方向と、小さくて、密談に向いているような小屋を探す。
すると、また声が聞こえた。
「声が大きいぞ、ファーガス。私のことを呼ぶときは特に気をつけろといったはずだ」
「も、申し訳ございません」
「ふん。まあ良い。明日になればあの村も燃えてなくなるのだ」
あの売女の意思も、一族の恥も一緒にな。
あそこだ。
見つけた。小さな明かりが見える。
もっと近くに…。
「それで、準備は完璧なんだろうな?」
「もちろんでございます。あの村の近くの山に住んでいる山賊にたんまり金を渡して、指示してございます。頭は元々あの村に恨みを持っていたようで、すぐ頷きました」
嘘!?ハルトはそんなこと言ってなかった。
「わかった。だが、口封じはちゃんとしろ。変なところから私の名が出てきて爵位をはく奪されてはかなわん」
「御意」
声の2人が中から出てくる。
アイシアナは咄嗟に物陰に隠れた。
流れるような銀髪が月明かりに照らされ、光を放つ。
貴族…。
彼らの姿が完全に見えなくなると、アイシアナは物陰から飛び出した。
帰らなきゃ。帰ってローディーに知らせないと。
そこで、ハタと立ち止まる。
ローディーがこのことを知れば、きっと火災は起らない。
それはつまり、過去を変えてしまうことになるわけで…。
タブーを犯してしまうということ。
それだけは絶対にダメだ!
だけど…。
アイシアナは迷っていた。
帰り道でも、お布団の中でも、頭にあるのはさっきの会話のみ。それ以外頭に入ってこない。
どうすればいいの?
これはもう既に流れた過去。だから一度過ぎてしまったことを変えてはいけないのもわかる。
でも…。でも…。
その過去を目の前にして、知っていて何もしないなんて胸がもどかしくて、痛みを訴えている。
いくら胸を掻いても、その痛みからも、もどかしさからも解放されない。
とても、辛い。
火災で何もかも燃えてしまうのだ。
あの小麦畑も、私たちの思い出も。
なにもかも…。
そして、この村に住む人たちが積み上げてきたものも一緒に。
なんだか考えていたら腹が立ってきた。
今日はもう遅い。明日会ったら文句言ってやる。あの性格の悪い貴族に。
最後はもうヤケ。
アイシアナはそう決めて、目を閉じた。
まぶたに映ったのは、あの綺麗な銀髪だった。
声が聞こえた方向と、小さくて、密談に向いているような小屋を探す。
すると、また声が聞こえた。
「声が大きいぞ、ファーガス。私のことを呼ぶときは特に気をつけろといったはずだ」
「も、申し訳ございません」
「ふん。まあ良い。明日になればあの村も燃えてなくなるのだ」
あの売女の意思も、一族の恥も一緒にな。
あそこだ。
見つけた。小さな明かりが見える。
もっと近くに…。
「それで、準備は完璧なんだろうな?」
「もちろんでございます。あの村の近くの山に住んでいる山賊にたんまり金を渡して、指示してございます。頭は元々あの村に恨みを持っていたようで、すぐ頷きました」
嘘!?ハルトはそんなこと言ってなかった。
「わかった。だが、口封じはちゃんとしろ。変なところから私の名が出てきて爵位をはく奪されてはかなわん」
「御意」
声の2人が中から出てくる。
アイシアナは咄嗟に物陰に隠れた。
流れるような銀髪が月明かりに照らされ、光を放つ。
貴族…。
彼らの姿が完全に見えなくなると、アイシアナは物陰から飛び出した。
帰らなきゃ。帰ってローディーに知らせないと。
そこで、ハタと立ち止まる。
ローディーがこのことを知れば、きっと火災は起らない。
それはつまり、過去を変えてしまうことになるわけで…。
タブーを犯してしまうということ。
それだけは絶対にダメだ!
だけど…。
アイシアナは迷っていた。
帰り道でも、お布団の中でも、頭にあるのはさっきの会話のみ。それ以外頭に入ってこない。
どうすればいいの?
これはもう既に流れた過去。だから一度過ぎてしまったことを変えてはいけないのもわかる。
でも…。でも…。
その過去を目の前にして、知っていて何もしないなんて胸がもどかしくて、痛みを訴えている。
いくら胸を掻いても、その痛みからも、もどかしさからも解放されない。
とても、辛い。
火災で何もかも燃えてしまうのだ。
あの小麦畑も、私たちの思い出も。
なにもかも…。
そして、この村に住む人たちが積み上げてきたものも一緒に。
なんだか考えていたら腹が立ってきた。
今日はもう遅い。明日会ったら文句言ってやる。あの性格の悪い貴族に。
最後はもうヤケ。
アイシアナはそう決めて、目を閉じた。
まぶたに映ったのは、あの綺麗な銀髪だった。
24
お気に入りに追加
1,764
あなたにおすすめの小説


【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)


婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?
ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。
アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。
15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる