悪役令嬢の末路

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探し人《夢》【9】

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 私が、未来であの子に出会ってから何年経っただろう。3年…いや、もっと経っている気がする。婆様に引き取られてから、この森から出ることを禁止され、結局妹を見守ることすらできない状況にあったのである。
 そして、腕の中にいる妹は、あの時の妹の姿をしていても、私の妹ではないという。
 けれど婆様は言う。

 生まれ変わることを拒否して、私のもとに来たって。
 それって一体どういうこと?

 婆様はこの数年で私の性格を熟知しているのか、怪しい目を向ける。

 「おまえ、さっきの話がうまく呑み込めてないようだね」

 ギクッ。

 「…いいかい。生き物が死んだ後、魂は天に帰って3通りの道を歩むんだ。1つは転生への道。前世で特に目立った悪事をすることなく生を終えた魂は、またすぐに地上に降りて次の人生を始めることができる。もちろん前世の記憶は消去されるが…。2つめは天国への道。前世で余程悪いことがあったり、疲れたりした魂は、そこで暮らしたり、前世の傷を癒すことも可能だ。3つめは地獄への道。人を殺めたり、前世で悪いことをした人が通る道だね。それで、転生についてだが、転生することを決めた魂は、自分のなりたいものへの思いが強いほど、それは現実になる。逆に、特にこれと言って突出した意思がないと、あちらが勝手に決めた生き物へと生まれ変わることになる。それにね、前世と同じようにはいかないものの、似たようなものに生まれ変わりたいと望んだ魂は、複雑な手続きが必要なんだ。前世と同じ顔、同じ身体、同じ声、になるためにね。だから、その手続きが不十分なまま転生すると、自分の望んだようなものにはなれない。…つまりさ、この子はちゃんとした手順踏んでここまで来たんだ。そのまま転生してくれば楽だったのに、わざわざだよ。それに運もよかったんだ。転生先は誰にも決められない。あんたたち、無事に会えてよかったね。これこそ本物の奇跡だよ」

 そこまで聞くと、なんだか胸の中にストンと落ち着くものがあった。

 それじゃあのとき、この子は私の話を聞いていて、言葉通り私のところに来てくれたんだ。

 腕の中のこの子を見下ろす。
 目頭が熱い。

 「ありがとう。私の言葉忘れずに、ちゃんと来てくれたんだね」
 「あうー!」

 この子はこの子で何やら満足気だ。
 …すると。

 ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる……。

 部屋におなかの音が響く。

 「ハッハッハッハッハッハ。さぁ、アイシアナ。この子にミルクを飲ませておやり。この子もさすがにおなかが減って仕方がないんだろう。年寄りの長話にも我慢も限界だったんだろうしな。あぁ。楽しい。家族が増えるのはいいことだな、アイシアナ」

 今日は珍しく、婆様が嬉しそうだ。
 婆様が嬉しそうだと、私も嬉しくなってくる。

 気持ちは伝染する。
 まるで風のように。



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