悪役令嬢の末路

ラプラス

文字の大きさ
上 下
35 / 68

探し人《夢》【6】

しおりを挟む
 あれから…。そう、いろいろあって今、私はおばあさんと森の中を歩いている。

 本当に色々あったんだ。おばあさんの後をついて行った後、私が目を覚ますと、そこは施設の布団の中じゃなくて、病院の硬いベットの上だった。さっきまで一緒にいたはずのおばあさんもいなくて。目覚めた私に気づいたお医者さんが教えてくれた、私はなんと10日程ずっと寝ていたという。聞いてびっくり、一夜の間違いじゃないのか?!って思って施設に帰ったら、私を慕ってくれている小さい子達が泣きながらダイブしてきて、あぁ、10日寝てたのは本当だったんだなって理解した。

 それに、一つ気づいたことがある。
 血が繋がってもいなくても、家族は作れるってこと。

 私はもう、一人なんかじゃなかった。
 私の帰りを心配して、待ってくれる家族が、ここにいた。


 ーーそう、やっと気づけたのに、私の前に再びおばあさんが現れて、私を引き取ると言いだしたのはついさっきのこと。



 ……この展開に全くついていけないのは、私だけじゃないと思いたい。


 引き取るって…。もうちょっと時間かけてすることじゃないの?それとも、あのおばあさん、私の見ていない間に院長先生に大量の寄付金払って、私を引き取ろうとしたとか…?
 うーむ。でも、どうしてそこまでして私を引き取りたいと思ったのか、全く理解できん…。
 私、自分で言うのもなんだけど、夢の中ではおばあさんに迷惑ばっかりかけてたはずだし、寧ろ引き取ってって言われたら、嫌だって言うはずなんだけどなぁ。

 とまぁ、そんなこんなでいろいろありまして、今森の中を歩いていると。


 「着いた」

 おばあさんの一言で、さっきまでうんうん俯いて考えていた私は顔を上げた。

 「ここがおばあさんの家ですか?」
 「見ればわかるだろう。さ、こっちへおいで」

 おばあさん言われるまま、ついていく。

 「…そうだ。家に入る前に声を渡しておく。これをいつでも身につけていなさい。絶対に外しては駄目だからな」

 そう行って渡されたのは、水晶でできた…首飾り?
 不思議に思いつつも、首にかけた。

 「?」

 特に変化はない。
 そんな私を見かねて、おばあさんは声をかける。

 「何してるんだい。ぼさっと突っ立てないで、玄関はこっちだよ」
 「は、はいっ」

 家の中に入ると、思ったより広くてキョロキョロしてしまう。

 「アイシアナ。こっちへおいで」

 ここできて初めて名前を呼ばれて、嬉しくなる。

 「はいっ」
 「一応自己紹介しとくよ。あたしはベラドンナ。まぁ…見た目からわかるように、ただのばあさんだ。よろしく」
 「はい。もう知ってると思いますが私はアイシアナ・シュラバス・スコッティング・アリセラ・モゼットと言います。これからよろしくお願いします!おばあさん」


 こうして、不思議な出会い方をした一人の少女と一人のおばあさんの二人暮らしが始まった。



しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

婚約する前から、貴方に恋人がいる事は存じておりました

Kouei
恋愛
とある夜会での出来事。 月明りに照らされた庭園で、女性が男性に抱きつき愛を囁いています。 ところが相手の男性は、私リュシュエンヌ・トルディの婚約者オスカー・ノルマンディ伯爵令息でした。 けれど私、お二人が恋人同士という事は婚約する前から存じておりましたの。 ですからオスカー様にその女性を第二夫人として迎えるようにお薦め致しました。 愛する方と過ごすことがオスカー様の幸せ。 オスカー様の幸せが私の幸せですもの。 ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

処理中です...