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夢【3】
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彼の別荘は、とっても広かった。
別荘がこんなに広かったら、屋敷になったらもっと広いのだろう。
考えただけでも唖然としてしまう。
「本当に申し訳ございませんでした」
「いいえ。勝手に来てしまったこちらが悪いので、どうぞお構いなく。それに、聞いてしまったのですが、婚約者の方がいらっしゃるのでしょう?私はあまりここにいない方が良いと思うので、少しここで休ませていただいたら、帰らせて頂きます。ですから、大丈夫ですよ」
「そんな…っ。坊っちゃまからお話は伺っております。なんでも道に迷ってしまわれたのだとか。それでは帰れる道でも帰れません。どうぞ数日でも良いのです滞在してはいただけませんか?」
強く押されてしまい…結局数日の間だけ滞在させていただくことになった。
別荘のメイド達は、バーサさんの指示なのか、いきなり現れた私を見て嫌な顔すらせず、寧ろ笑顔で対応してくれた。対応も、仕事ぶりも一級品な彼女達は、私に突っかかってくることはなかったし、嫌味を言ってくることもなかった。さすがプロ。
甲斐甲斐しく夕食のお世話をしてもらい、湯浴みを済ませると、一人夜風に当たって月を眺める。今日はにっかり笑い顔の三日月。
私のこと、笑ってるのかしら。
目を伏せると、月明かりに照らされた庭が目に入る。優秀な庭師がいるのか、庭の設計はすばらしい。噴水も置いてあって、とても綺麗だ。
庭に出ても…いいかな?
チラッと振り返ると、湯浴みの手伝いをしてくれていたメイドはもう部屋にいなかった。
よし、出てみよう!
廊下に出て、こそこそっと外に出てみる。
うん。良い感じ。
ここの庭師は、銅像を置くのが好きなのか、いろんな像が置いてある。天使やキューピッド、マンモス、犬、神様らしき像まで、様々。
でも、一番素晴らしいのはこの噴水。水に映る月はとても神秘的。
綺麗だなぁ…と、うっとり見つめていると、後ろから声がかかった。
「そんなに綺麗に感じる?」
「っ…ええ…」
「そうか。やっぱり、普通の人は、みんなこれを綺麗だと思うんだね」
「あなたはそう感じないって言うの?」
彼はうなづいた。
「そう。何も感じないんだ。綺麗なものも、ただの空虚に見える。何かを見て、満たされたり、感動したことなんて一度もない」
「でもっ、昼間は「あれはただ応答しただけだったろう?何も感じなくてもそんなこと誰だってできるよ」」
「そんな…」
「こんな僕に幻滅した?」
「幻滅はしてない。でも、あのとき『そうだろう』ってうなづいてくれたとき、本当に嬉しかった。……だから、私を助けてくれたお礼に、今度は私が綺麗なものが綺麗だと感じるように、教えてあげる」
「そうか。ありがとう。じゃないと人間関係にまで支障をきたしそうだからね」
「あ、あなたどんだけ空虚に感じてるのよ。人生は空虚だけじゃないわ!世の中にいろんな色があるように、あなたにもいろんな感情があるのよ?」
「…そうなのかい?」
「『そうなのかい?』って、もうすこし真剣になっても良いと思うのだけど」
そう言うと、彼は笑った。
私も嬉しくなって、笑った。
この瞬間、彼がある一つの感情を見つけたことを、私は知らない。
別荘がこんなに広かったら、屋敷になったらもっと広いのだろう。
考えただけでも唖然としてしまう。
「本当に申し訳ございませんでした」
「いいえ。勝手に来てしまったこちらが悪いので、どうぞお構いなく。それに、聞いてしまったのですが、婚約者の方がいらっしゃるのでしょう?私はあまりここにいない方が良いと思うので、少しここで休ませていただいたら、帰らせて頂きます。ですから、大丈夫ですよ」
「そんな…っ。坊っちゃまからお話は伺っております。なんでも道に迷ってしまわれたのだとか。それでは帰れる道でも帰れません。どうぞ数日でも良いのです滞在してはいただけませんか?」
強く押されてしまい…結局数日の間だけ滞在させていただくことになった。
別荘のメイド達は、バーサさんの指示なのか、いきなり現れた私を見て嫌な顔すらせず、寧ろ笑顔で対応してくれた。対応も、仕事ぶりも一級品な彼女達は、私に突っかかってくることはなかったし、嫌味を言ってくることもなかった。さすがプロ。
甲斐甲斐しく夕食のお世話をしてもらい、湯浴みを済ませると、一人夜風に当たって月を眺める。今日はにっかり笑い顔の三日月。
私のこと、笑ってるのかしら。
目を伏せると、月明かりに照らされた庭が目に入る。優秀な庭師がいるのか、庭の設計はすばらしい。噴水も置いてあって、とても綺麗だ。
庭に出ても…いいかな?
チラッと振り返ると、湯浴みの手伝いをしてくれていたメイドはもう部屋にいなかった。
よし、出てみよう!
廊下に出て、こそこそっと外に出てみる。
うん。良い感じ。
ここの庭師は、銅像を置くのが好きなのか、いろんな像が置いてある。天使やキューピッド、マンモス、犬、神様らしき像まで、様々。
でも、一番素晴らしいのはこの噴水。水に映る月はとても神秘的。
綺麗だなぁ…と、うっとり見つめていると、後ろから声がかかった。
「そんなに綺麗に感じる?」
「っ…ええ…」
「そうか。やっぱり、普通の人は、みんなこれを綺麗だと思うんだね」
「あなたはそう感じないって言うの?」
彼はうなづいた。
「そう。何も感じないんだ。綺麗なものも、ただの空虚に見える。何かを見て、満たされたり、感動したことなんて一度もない」
「でもっ、昼間は「あれはただ応答しただけだったろう?何も感じなくてもそんなこと誰だってできるよ」」
「そんな…」
「こんな僕に幻滅した?」
「幻滅はしてない。でも、あのとき『そうだろう』ってうなづいてくれたとき、本当に嬉しかった。……だから、私を助けてくれたお礼に、今度は私が綺麗なものが綺麗だと感じるように、教えてあげる」
「そうか。ありがとう。じゃないと人間関係にまで支障をきたしそうだからね」
「あ、あなたどんだけ空虚に感じてるのよ。人生は空虚だけじゃないわ!世の中にいろんな色があるように、あなたにもいろんな感情があるのよ?」
「…そうなのかい?」
「『そうなのかい?』って、もうすこし真剣になっても良いと思うのだけど」
そう言うと、彼は笑った。
私も嬉しくなって、笑った。
この瞬間、彼がある一つの感情を見つけたことを、私は知らない。
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