66 / 68
灰色の顛末
しおりを挟む
「次が最後だよ、準備はいい?」
「はい!」
「行くよ」
死神のあとをついて、時空の渦に飲み込まれていった。
「あの子だね」
死神が止まった。
私も後ろから覗くと、小さい女の子が明かりもない小さな部屋で1人、人形ごっこをして遊んでいた。
「この子は誰?死神さん」
「見てわからない?君のお母さんだよ」
「え…」
「レディ・ローズ。魔術師を多く輩出している家門に生まれるが、高すぎる魔力をコントロールできず、魔力減退魔法のかかった部屋に軟禁されていたんだ。そこにーー」
「ローズ!やっと見つけた」
どこからともなく女の人がやって来て、お母さんを抱えていってしまった。
「あの人は?」
「アイシアナ・シュラバス・スコッティング・アリセラ・モゼット。君のおばあさんだよ」
「私のおばあさま?」
「そう。レディ・ローズは元々、時の魔女ベラドンナのお膝元、嘆きの森でアイシアナが育てるはずだったんだけど、アイシアナの夫がレディ・ローズを隠してしまったんだ。今は2人が再会したところ。少し時を送ってみよう」
すると、次は森に移動した。
「今あの2人は、本来あるべき姿に戻ろうとしている。そして、長い年月が経ち、すっかり大人の女性に成長したレディ・ローズは恋に落ちる。夢で出会った王子様にね」
「王子様?パパではないの?」
「うんや、君のパパとやらだよ。この頃レディ・ローズは君のお父さんにゾッコンで、自分だけの王子様だと思っていたからね。そして、2人は結婚。君という愛の結晶をもうけ、幸せに暮らした。そしてーー」
「事故にあった」
「そう。馬車に轢かれそうになった平民の男の子を助けて亡くなったんだ」
「言葉にすると、なんて短い人生…。それでも、とても美しく、情熱的な人生を歩んだのね、私のお母さまは」
「ああそうさ、シュトワネーゼ公爵夫人。これからあなたはどう生きる?君は複数人の人生を見てきたけど、どうだった?自分の生き方に後悔している人はいたかい?」
「私は…」
刹那、ひだまりのような温かい光が、さしてきた。
「残念。時間が来てしまったようだ。さあ、今のうちに行くといい、君を呼んでいる人たちの元へ」
「でも、どうやって帰ったらいいの?」
「簡単さ、ただ望めばいい。大丈夫。君は正しい道を切り拓いていけるよ」
あの人もとへ、カイル様の元へ、私を返して!
そう願うと、体に羽が生えたのように身体が宙を浮きはじめた。
死神を振り返ると、手を振っている。
「ありがとう!さようなら!」
そう言って、私は時空の切れ間を抜けて、闇へと進んでいった。
「はい!」
「行くよ」
死神のあとをついて、時空の渦に飲み込まれていった。
「あの子だね」
死神が止まった。
私も後ろから覗くと、小さい女の子が明かりもない小さな部屋で1人、人形ごっこをして遊んでいた。
「この子は誰?死神さん」
「見てわからない?君のお母さんだよ」
「え…」
「レディ・ローズ。魔術師を多く輩出している家門に生まれるが、高すぎる魔力をコントロールできず、魔力減退魔法のかかった部屋に軟禁されていたんだ。そこにーー」
「ローズ!やっと見つけた」
どこからともなく女の人がやって来て、お母さんを抱えていってしまった。
「あの人は?」
「アイシアナ・シュラバス・スコッティング・アリセラ・モゼット。君のおばあさんだよ」
「私のおばあさま?」
「そう。レディ・ローズは元々、時の魔女ベラドンナのお膝元、嘆きの森でアイシアナが育てるはずだったんだけど、アイシアナの夫がレディ・ローズを隠してしまったんだ。今は2人が再会したところ。少し時を送ってみよう」
すると、次は森に移動した。
「今あの2人は、本来あるべき姿に戻ろうとしている。そして、長い年月が経ち、すっかり大人の女性に成長したレディ・ローズは恋に落ちる。夢で出会った王子様にね」
「王子様?パパではないの?」
「うんや、君のパパとやらだよ。この頃レディ・ローズは君のお父さんにゾッコンで、自分だけの王子様だと思っていたからね。そして、2人は結婚。君という愛の結晶をもうけ、幸せに暮らした。そしてーー」
「事故にあった」
「そう。馬車に轢かれそうになった平民の男の子を助けて亡くなったんだ」
「言葉にすると、なんて短い人生…。それでも、とても美しく、情熱的な人生を歩んだのね、私のお母さまは」
「ああそうさ、シュトワネーゼ公爵夫人。これからあなたはどう生きる?君は複数人の人生を見てきたけど、どうだった?自分の生き方に後悔している人はいたかい?」
「私は…」
刹那、ひだまりのような温かい光が、さしてきた。
「残念。時間が来てしまったようだ。さあ、今のうちに行くといい、君を呼んでいる人たちの元へ」
「でも、どうやって帰ったらいいの?」
「簡単さ、ただ望めばいい。大丈夫。君は正しい道を切り拓いていけるよ」
あの人もとへ、カイル様の元へ、私を返して!
そう願うと、体に羽が生えたのように身体が宙を浮きはじめた。
死神を振り返ると、手を振っている。
「ありがとう!さようなら!」
そう言って、私は時空の切れ間を抜けて、闇へと進んでいった。
22
お気に入りに追加
1,485
あなたにおすすめの小説
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる