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5【後半】
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『ねぇ、フローレ。もしあなたが自分の力を持ってしてでも解決することができず、苦しむ時があったら、わたしを頼りなさい』
胸を張って私に語りかける少女は、とても4歳児には見えなかった。
『で、でも…。わたし、人に迷惑をかけるなんて、できないよ…』
尻込みする3歳児は首を横に振ってその申し出を拒否した。
『阿呆!毎日毎日私の後ろに張り付いているのはどこのどちら様かしら?』
わたくしに迷惑がかかっていたことに自覚がなくて?
『ごめ、なさ…』
ごもっともな4歳児のお姉さまの発言に、3歳児の顔は本格的な泣き顔に変形してしまった。
『こらっ、すぐ泣くんじゃないわよ。わたしはいつもフローレのそばにはいられるわけじゃないのよ、耐えられるくらいにならなくちゃ』
『はい』
3歳児は俯くと、突然頭をわしゃわしゃと撫で回され、驚き固まった。
『ふふ、びっくりした?』
さっきとはうって変わり柔らかな雰囲気を纏ったお姉さまに内心戸惑いつつも、素直にコクリと頭を縦に頷く。
『やっぱり、わたしはフローレの素直なところが好きよ。嘘だらけの王宮よりもずっといいわ』
そう言ってにっこり笑い3歳児の頬にすりすりするお姉さまにつられて、3歳児も自然と笑顔になる。
そこでお姉さまははっと思い出したように3歳児から顔を離した。が、依然として顔と顔の距離は変わらず近い。
『フローレ、何かあったらわたしに頼るのよ。迷惑なんて今更。どーんとかけてきなさい、いいわね?』
「夢…」
久しぶりに見た夢は、幼い日のあの方との最後の記憶だった。
あれからずっと寝ていたようで、目が覚めると朝になっていた。
「いけない…朝まで寝てしまったのね」
怠い体を叱ってベッドから起き上がったところでドアがノックされ、リリーが部屋に入ってきた。
「おはようございます奥様。ご気分はいかがでしょうか」
昨日は夕食をたべずに寝てしまったため、リリーは心配げに私を見ている。
「おはようリリー。ありがとう大丈夫よ。ところで、その封筒は?」
リリーは白い封筒を持っており、もしかしたらお父様あたりから旦那様に迷惑をかけていないか釘を刺す名目できたのかもしれないと思うとちょっぴり心配になる。
「あ、申し訳ありません忘れていました。どうぞ」
リリーから受け取った手紙には、宛名の私の名前しか書かれておらず、一瞬首を傾げたが、封蝋を見て誰から届いたのかすぐにわかった。
封を切って、中の手紙を取り出すと、あの方の好きな花の香りがふわっと広がった。
手紙の相手は予想通りの相手からで、『ちょっと話があるから、明後日の午後、王宮の中庭にて待つ』と、書かれていた。
「奥様?どなたからのお手紙だったのですか?」
滅多に来ることはない私宛の手紙に興味津々なのか、リリーは手紙が気になって仕方がないようだ。
「えっと…実家の母からの手紙よ。久しぶりに私の顔が見たいと」
「まぁっ!旦那様とご成婚されてから既に半年経ちましたものね。奥様のお母君様も奥様が元気になされているかご心配なのでしょう。旦那様に里帰りを申し出てみてはいかがでしょうか」
すると、リリーはハッとしたように口をすぼめた。
「申し訳ありません。余計な物言いでした」
「そんなことないわ、リリーありがとう。旦那様に聞いてみるわね」
そういうと、リリーは顔をほころばせてうなずいた。
「はいっ!」
胸を張って私に語りかける少女は、とても4歳児には見えなかった。
『で、でも…。わたし、人に迷惑をかけるなんて、できないよ…』
尻込みする3歳児は首を横に振ってその申し出を拒否した。
『阿呆!毎日毎日私の後ろに張り付いているのはどこのどちら様かしら?』
わたくしに迷惑がかかっていたことに自覚がなくて?
『ごめ、なさ…』
ごもっともな4歳児のお姉さまの発言に、3歳児の顔は本格的な泣き顔に変形してしまった。
『こらっ、すぐ泣くんじゃないわよ。わたしはいつもフローレのそばにはいられるわけじゃないのよ、耐えられるくらいにならなくちゃ』
『はい』
3歳児は俯くと、突然頭をわしゃわしゃと撫で回され、驚き固まった。
『ふふ、びっくりした?』
さっきとはうって変わり柔らかな雰囲気を纏ったお姉さまに内心戸惑いつつも、素直にコクリと頭を縦に頷く。
『やっぱり、わたしはフローレの素直なところが好きよ。嘘だらけの王宮よりもずっといいわ』
そう言ってにっこり笑い3歳児の頬にすりすりするお姉さまにつられて、3歳児も自然と笑顔になる。
そこでお姉さまははっと思い出したように3歳児から顔を離した。が、依然として顔と顔の距離は変わらず近い。
『フローレ、何かあったらわたしに頼るのよ。迷惑なんて今更。どーんとかけてきなさい、いいわね?』
「夢…」
久しぶりに見た夢は、幼い日のあの方との最後の記憶だった。
あれからずっと寝ていたようで、目が覚めると朝になっていた。
「いけない…朝まで寝てしまったのね」
怠い体を叱ってベッドから起き上がったところでドアがノックされ、リリーが部屋に入ってきた。
「おはようございます奥様。ご気分はいかがでしょうか」
昨日は夕食をたべずに寝てしまったため、リリーは心配げに私を見ている。
「おはようリリー。ありがとう大丈夫よ。ところで、その封筒は?」
リリーは白い封筒を持っており、もしかしたらお父様あたりから旦那様に迷惑をかけていないか釘を刺す名目できたのかもしれないと思うとちょっぴり心配になる。
「あ、申し訳ありません忘れていました。どうぞ」
リリーから受け取った手紙には、宛名の私の名前しか書かれておらず、一瞬首を傾げたが、封蝋を見て誰から届いたのかすぐにわかった。
封を切って、中の手紙を取り出すと、あの方の好きな花の香りがふわっと広がった。
手紙の相手は予想通りの相手からで、『ちょっと話があるから、明後日の午後、王宮の中庭にて待つ』と、書かれていた。
「奥様?どなたからのお手紙だったのですか?」
滅多に来ることはない私宛の手紙に興味津々なのか、リリーは手紙が気になって仕方がないようだ。
「えっと…実家の母からの手紙よ。久しぶりに私の顔が見たいと」
「まぁっ!旦那様とご成婚されてから既に半年経ちましたものね。奥様のお母君様も奥様が元気になされているかご心配なのでしょう。旦那様に里帰りを申し出てみてはいかがでしょうか」
すると、リリーはハッとしたように口をすぼめた。
「申し訳ありません。余計な物言いでした」
「そんなことないわ、リリーありがとう。旦那様に聞いてみるわね」
そういうと、リリーは顔をほころばせてうなずいた。
「はいっ!」
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