冬生まれ

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翌日。

「よぉ、結那!」「おはよう。奏人!」

いつもの様に登校し、女子に囲まれていた結那へと声を掛ける。結那は笑顔で返事をするが、女子達は未だに俺を許しちゃいないらしく、鋭い眼孔で牽制を掛けてくる。だが、今日という今日は恐れてもいられない。

「結那、あのさぁ今日の放課後なんだけど……」「何?あっ、もしかして一緒に帰ろうってお誘い?」

凄く機嫌が良い結那を不思議に思ったが、気にせず告げる。

「いや、そうじゃなくて……」「なんだ。違うのか」

結那は一緒に下校したかったのか、断ると残念そうな顔をした。

「それよりもお前に頼みたい事があるんだ!」「頼みたい事…?」「あぁ。だから今日の放課後、教室に残ってて欲しいんだけど!」

約束を申しつけると、何かを考えた後に『分かった』と頷き了承する結那。俺は『じゃ、よろしく!』とその場を離れて他の友人達と下らない話で盛り上がった。

そうして時間が過ぎ行くなか、待ちに待った放課後がやって来た……。

「───お前、今日も行かねーのか?」「最近付き合い悪ぃよなー!」「悪い悪い。今度必ず行くからさぁ?」「ぜってぇーだからな!」

遊びに誘う友人らに別れを告げると、俺はすぐさま持参した紙袋を持って誰にも見つからない様に男子トイレへと駆け込んだ。近場の個室に入ると紙袋の中身を取り出す。中に入っているのは、姉貴の昔着ていた此処の制服と化粧道具、カツラの3点セットだ。俺は着ていた学ランを脱いで姉貴の制服に着替えると、大急ぎで自身の顔に化粧を施した。練習していた甲斐もあり、手鏡を見ながら手早く施す化粧のテクニックは完璧そのもの。最後に長い黒髪のカツラを被れば、今どき流行りの女の子が出来上がっていた。

「わーお!流石は俺……いや、ア、タ、シ!」

手鏡に向かってキッスをしてから、個室トイレの扉を思いっきりこじ開けた。

「待ってろよっ!斉藤 結那!!」「うおっ!?」

声を張り上げ個室を出ると、他クラスの男子が目の前で用を足しながら此方を見て固まっていた。

「あら、ごめんなさい?オホホホ~!!」「い、いえ……」

目が合って数秒、引きつり顔の彼に笑顔で言葉を交わした俺は紙袋を持って颯爽と男子トイレから出ていった。これが後に男子トイレの七不思議になったのは言うまでもない。
それはさて置き、教室に待たせている結那の元へと足早に向かう俺は、最後の作戦に胸を弾ませていた。
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