3 / 7
3
しおりを挟む
次々と失敗するなか、まだ諦めきれなかった俺は何かないかと模索する。そんななか、唇にスティックのりみたいなリップを塗る女子に目がいった。
「みてみて!どう?」「おっ、それ良いね~!色付き?彼氏もイチコロじゃーん!!」「それなー!」
キャッキャッとはしゃぐ女子達を邪な────否、微笑ましく見つめていたら、あることを閃いた。それは結那自身を陥れるには十分過ぎるほどの作戦だった。相も変わらず女子達に囲まれ楽しそうな結那を見つめながら『笑っていられるのも今のうちだぜっ!』と悪役並の笑みを浮かべ、その日は学校が終わるとゲーセンの誘いを断り早々に帰宅した。
家に帰った俺は、さっそくある道具を持ち寄り、その人物の帰りを今か今かと待ち望んでいた。夕刻ぐらいに帰宅したその人物は、持ち出された私物に俺を怒鳴りつけた。
「ちょっとアンタ、何考えてんの?ひとの化粧品を勝手に持ち出して!!」「姉ちゃん頼む!お願いがあるんだっ!!」「はぁ?」
足元に土下座をする俺に、パチクリと瞬きをした姉貴はワケを訊ねる。俺は咄嗟に考えた出任せを熱弁して姉貴を説得した。
「───学校のイベントで女装する事になったからアタシに化粧を教えろと?」「そうなんだ!だからこの際、リアリティを追求しようと姉ちゃんに化粧の仕方を教えて貰いたくって……」「ふぅん」
すっかり騙された姉貴は、しょうがないわねぇと渋々承諾する。
「いいわよ!ただし、後でリップグロスは買い直して貰うからね?」「ウグッ…わ、分かった!」「よろしい。それじゃあまずはアタシが化粧してやるから、それを真似て覚えなさい?」「おう!」
俺の顔に化粧を施しながら教えてくる姉貴。俺はいつもより真剣になりながら、化粧品の名前やら仕方を覚えた。鏡越しに映る自分はそれから数分もしない内に徐々に女の子へと変貌した。
「うおおお!すっげえ!!」「あとはウィッグをつけて…よし、出来上がり!」
じゃーん!と得意気に笑う姉貴が化粧を終わらせると、そこにいたのは服以外完全な女になった俺だった。
「やっぱりアンタ似合うわね?アタシよりいけてんじゃん」「マジ!?俺もそう思うわ~~!」「ウゼェ…調子こくなよ?このクソ弟」「うふふふ~!!ごめんお遊ばせぇ~~お姉様~?」
切れ気味の姉貴にふざけてみるも、女装のお陰か、いつもみたいに手を上げられる事はなかった。
「まぁ、可愛いのは確かね。ほら、次はアンタが化粧をする番よ?一回化粧を落としなさい!」「へーい」
された化粧を一端落として、今度は自分でやる様に言われる。鏡を見ながら俺は姉貴に指示されながら化粧した。しかし初心者なのか、なかなか上手くいかない。
「ファンデーション塗りすぎ!アイラインはみ出してる!リップグロスは唇以外に塗るなっつってんでしょ!?」「は、はいっ!」
叱咤されながら出来た化粧は、ヘンテコ過ぎて姉貴が途中で噴き出す始末。
「ブッ…ブッッサァ!!さっきよりお似合いよ?奏人ちゃんっっギャハハハ!!!!」「笑うなっ!」
腹を抱えて笑う姉貴を余所に化粧を落とした俺は、鏡を見つめながらもっと上手くなってやると決意を胸にした。そうして死に物狂いで化粧を勉強した俺は、寝る間も惜しんで【授業中は寝ていたけども】必死に頑張った結果。
「あら、アンタ凄いじゃない!」「まっあね~~?」
カツラである長い黒髪を手で払い、姉貴が昔使っていた同校の制服を着てポーズをとれば、姉貴に褒められるほどには上達していた。
「そこまで出来れば十分ね。上手くいくと良いわね?」「ああ。これでアイツをギャフンと……」「ギャフン?」「あ…いや、こっちの話!」
思わず漏れた本音に姉貴が不思議そうな顔をしたが慌てて誤魔化し、俺は陰で悪い笑みを浮かべていた。
全ては結那への仕返しの為に……。
「みてみて!どう?」「おっ、それ良いね~!色付き?彼氏もイチコロじゃーん!!」「それなー!」
キャッキャッとはしゃぐ女子達を邪な────否、微笑ましく見つめていたら、あることを閃いた。それは結那自身を陥れるには十分過ぎるほどの作戦だった。相も変わらず女子達に囲まれ楽しそうな結那を見つめながら『笑っていられるのも今のうちだぜっ!』と悪役並の笑みを浮かべ、その日は学校が終わるとゲーセンの誘いを断り早々に帰宅した。
家に帰った俺は、さっそくある道具を持ち寄り、その人物の帰りを今か今かと待ち望んでいた。夕刻ぐらいに帰宅したその人物は、持ち出された私物に俺を怒鳴りつけた。
「ちょっとアンタ、何考えてんの?ひとの化粧品を勝手に持ち出して!!」「姉ちゃん頼む!お願いがあるんだっ!!」「はぁ?」
足元に土下座をする俺に、パチクリと瞬きをした姉貴はワケを訊ねる。俺は咄嗟に考えた出任せを熱弁して姉貴を説得した。
「───学校のイベントで女装する事になったからアタシに化粧を教えろと?」「そうなんだ!だからこの際、リアリティを追求しようと姉ちゃんに化粧の仕方を教えて貰いたくって……」「ふぅん」
すっかり騙された姉貴は、しょうがないわねぇと渋々承諾する。
「いいわよ!ただし、後でリップグロスは買い直して貰うからね?」「ウグッ…わ、分かった!」「よろしい。それじゃあまずはアタシが化粧してやるから、それを真似て覚えなさい?」「おう!」
俺の顔に化粧を施しながら教えてくる姉貴。俺はいつもより真剣になりながら、化粧品の名前やら仕方を覚えた。鏡越しに映る自分はそれから数分もしない内に徐々に女の子へと変貌した。
「うおおお!すっげえ!!」「あとはウィッグをつけて…よし、出来上がり!」
じゃーん!と得意気に笑う姉貴が化粧を終わらせると、そこにいたのは服以外完全な女になった俺だった。
「やっぱりアンタ似合うわね?アタシよりいけてんじゃん」「マジ!?俺もそう思うわ~~!」「ウゼェ…調子こくなよ?このクソ弟」「うふふふ~!!ごめんお遊ばせぇ~~お姉様~?」
切れ気味の姉貴にふざけてみるも、女装のお陰か、いつもみたいに手を上げられる事はなかった。
「まぁ、可愛いのは確かね。ほら、次はアンタが化粧をする番よ?一回化粧を落としなさい!」「へーい」
された化粧を一端落として、今度は自分でやる様に言われる。鏡を見ながら俺は姉貴に指示されながら化粧した。しかし初心者なのか、なかなか上手くいかない。
「ファンデーション塗りすぎ!アイラインはみ出してる!リップグロスは唇以外に塗るなっつってんでしょ!?」「は、はいっ!」
叱咤されながら出来た化粧は、ヘンテコ過ぎて姉貴が途中で噴き出す始末。
「ブッ…ブッッサァ!!さっきよりお似合いよ?奏人ちゃんっっギャハハハ!!!!」「笑うなっ!」
腹を抱えて笑う姉貴を余所に化粧を落とした俺は、鏡を見つめながらもっと上手くなってやると決意を胸にした。そうして死に物狂いで化粧を勉強した俺は、寝る間も惜しんで【授業中は寝ていたけども】必死に頑張った結果。
「あら、アンタ凄いじゃない!」「まっあね~~?」
カツラである長い黒髪を手で払い、姉貴が昔使っていた同校の制服を着てポーズをとれば、姉貴に褒められるほどには上達していた。
「そこまで出来れば十分ね。上手くいくと良いわね?」「ああ。これでアイツをギャフンと……」「ギャフン?」「あ…いや、こっちの話!」
思わず漏れた本音に姉貴が不思議そうな顔をしたが慌てて誤魔化し、俺は陰で悪い笑みを浮かべていた。
全ては結那への仕返しの為に……。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
アルファの家系
リリーブルー
BL
入学式の朝、初めての発情期を迎えてしまったオメガの美少年。オメガバース。
大洗竹春 アルファ 大学教授 大洗家当主
大洗潤 オメガ 高校生 竹春の甥 主人公
大洗譲 アルファ 大学生 竹春の長男
夏目隼人 オメガ 医師 譲の恋人
大洗竹秋 オメガ 故人 潤の父 竹春の兄
関連作品『潤 閉ざされた楽園』リリーブルー
フジョッシーに投稿したものを推敲し二千文字程加筆しました。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
突然現れたアイドルを家に匿うことになりました
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
「俺を匿ってくれ」と平凡な日向の前に突然現れた人気アイドル凪沢優貴。そこから凪沢と二人で日向のマンションに暮らすことになる。凪沢は日向に好意を抱いているようで——。
凪沢優貴(20)人気アイドル。
日向影虎(20)平凡。工場作業員。
高埜(21)日向の同僚。
久遠(22)凪沢主演の映画の共演者。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる