催眠術

冬生まれ

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今日も虚ろな瞳で僕を映した彼の膝に跨がり、顔を見つめた。
整った顔に手を這わせて輪郭をなぞる。

「……君、好きな人がいたんだね」

そう訊ねても、彼から返事が帰ってくる事はない。
顔から手を離して彼の肩に腕を回す。

「羨ましいなぁ……君に好かれる人はさぁ?」

彼の耳元で愚痴るように囁いて顔を擦り付けると、彼の匂いが鼻をくすぐる。

〈あぁ、彼を手放したくないなぁ……〉

そんな思いが頭を駆け巡る。
このまま彼をずっと独占出来たら良いのに……。

どうせ彼の好きな人は僕じゃない。
そもそも、クラスメイトの一人としか認識されてないだろうし、男の僕を好きになるはずがない。
彼も男だし。
かといって、僕が彼に告白したところで彼に振られて挙げ句の果てには気持ち悪がられ、嫌われるのがオチだろう……。

「……いっそのこと催眠術で僕を好きにさせちゃおっかな?」
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