催眠術

冬生まれ

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催眠術の本を借りてから一週間が経としていた頃、僕はある話を耳にした。
それは夕凪くんと彼の友人達が話していた内容だ。

「なぁ、夕凪!お前、好きな奴とかいんの?」

唐突にクラスメイトの一人が呟いた。
その言葉に周りにいた女子達が一斉に聴き耳を立てる。

「うん。いるよ!」
「マジかよ!誰だっ!?」
「こんな処で言うわけねーだろ。まぁ、お前がクラスメイトの前で好きな奴に告白すんなら教えなくもねーが……」
「んな公開処刑誰がすっかよ!」

ギャハハと男達の笑い声が響くなか、女子達はヒソヒソと噂をしていた。

「夕凪くん好きな子いるって!」
「誰かなぁ……気になる!!」
「こんな処でって言ってたから、もしかしたらクラスの中にいるんじゃない!?」
「え~マジ!?チョー知りた~い!」

皆がざわざわと彼の好きな人で盛り上がりをみせる傍ら、僕は本を閉じて傷心していた。

あぁ、知りたく無かった。

彼に好きな人がいたなんて……。

チラリと見ると、彼は楽しそうに談笑していた。
僕は唇を噛み締めながら、ふと思い返す。
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