催眠術

冬生まれ

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授業が終わり帰り際、虚ろな瞳で僕を見つめる彼の肩を二回叩いて耳元で囁いた。

「もう、いいよ!今日は有難う夕凪くん」

最後にもう一回肩を叩くと、彼はハッとして正気に戻る。

「あれ、俺…朝比奈!?」
「───夕凪くん!」

彼から離れて廊下に出ると、それを見計らって皆が彼へと駆け寄った。

「夕凪、珍しいなぁ……。お前がアイツと一日中一緒にいるなんて」
「どうしたの~夕凪くん。何かあったの?」
「えっ、、いや、別に……」

皆が彼にアレやコレやと話し掛けるなか、僕は廊下で彼らの様子を伺う。

“断続的に催眠術を掛ける方法”

昨日見ていた本のページに書かれていた。
『合図をきっかけに』断続的に催眠術を掛ける事が出来ると……。
例えば合言葉だったり、行動などで催眠術を掛ける方法だ。
僕は彼の肩を叩く事で彼に命令を聞かせた。
本曰く、“三回”繰り返す方が効き目があると書いていあったので、二回叩いてから命令をし、三回目で催眠術を掛けたり解いたりするようにした。

廊下に響いてくるクラスメイトの声に含み笑いをし、僕は教室を後にした。
今日はいつもより長く一緒にいられたから、放課後は解放してあげた。
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