催眠術

冬生まれ

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僕と彼しかいない教室で、僕は本を片手に彼に話かける。

「あなたは、僕の事が好きですか?」
「……はい」

椅子に座る彼が静かに告げる。
思いがけない返事に、僕は再び問い掛けた。

「ほ、ほんとうに好き……?」
「はい」

虚ろな瞳で僕を見つめる彼の二度目の返事に、僕の手から本が放り投げられた。
同時に天井へと高らかに突き上げられた両の腕は、手を広げて、僕は喜びを噛み締める。

「やっ……やっ……やっっつたぁぁぁあ~~~!!」

まさか、本当に、、“催眠術”という非科学的なモノをかけられるとは……。
スマホやパソコンという電子機器のテクノロジーが発達する現代社会。
尚且つ、死活している紙媒体がまさかこんな処で役に立つとは、本もなかなか捨てたモノではない。
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