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しおりを挟む『いやいや、だって相手は“元”宿敵だし、しかもソイツと結婚だぞ?有り得な……いや、しかし。生活が困窮している今そんな事言ってる場合じゃ無いしな……ハッ!いやいやしっかりしろ!!相手はあの魔王だぞ!?あの極悪非道で最大の巨悪だった……あぁでも、やっぱりお金が欲しいッ!!』
女は悩みに悩んだ。時折、唸り声を上げながら自身の欲望と前世の記憶との葛藤を繰り広げる。そんななか、男が女を見兼ねて一言告げる。
「まぁ、無理にとは言わん。お前にも相手を選ぶ権利はあるしな」「魔王……」「だが、結婚しないのであれば慰謝料は支払わんぞ?」「あっ」
そう言って男は女からカードを取り上げ、財布に仕舞い込む。その様子を見ながら、女は『因み』にと口を開いた。
「も、もし結婚したらいくらぐらいの額を……?」
興味本意で訊ねる女に、男は澄ました顔で答える。
「望むのであればいくらでも」「ひゃ、100万とか1000万とかも……?」「億もいかんのか?お前はつくづく安上がりだな……」「お、お、億もいけんのかッ!?」「当たり前だが?」
女は男の言葉に卒倒した。これが金持ちと貧乏人の差だと落胆する。しかし、女は次の瞬間立ち上がり、素早い動きで男へと手を差し出した。
「やっぱり結婚して下さいッ!!」「おおぅ……」
急な女の心変わりに男は一瞬驚いたが、差し出された手を見つめる。
「ほんとに良いのか……?」
男が困惑気味に訊ねると、女は胸を張って頷いた。
「あぁ。背にお金は……じゃなかった腹は代えられないからなッ!結婚だろうがなんだろうがドンと来いってぇんだ!!」「……そうか」
意気揚々に告げる女に男は何処かホッとしたような顔で手を差し出し、固く握手を交わした。
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