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しおりを挟む「でも、今は今だろ?」
目を見開き視線を向ける男に、女はニッと笑った。
「過ぎてしまった過去はどうしようも無いさ。それよりも、今を生きてけって言ってんだよ!」「……」
男は呆然と女を見つめた。女は不意にベンチから立ち上がると、腰に手を宛て、広い空を見上げた。
「どんなに悔いたとしても、お前のした事は許されないかも知れない……だが、今のお前はもう魔王じゃないだ。なら過去を引き摺るよりも金持ちの社長として生きていきゃ良いとアタシは思うぜ?」
振り向き笑う女は続け様に言う。
「それでも後ろめたい気持ちがあるなら、今からでも償っていけば良いんだ!今まで苦しめてきた人達の分も、今度はお前が助けてやるんだ!!そしたらいつかきっと許される時が来るさ!」
その言葉に男は終始ポカンとしていたが、やがて呆れた様に笑った。
「全く、お前という奴は……」
男は女に勇者の面影を重ねた。何度殺されかけて死の淵を彷徨おうとも、ただ只管に追い掛け続けてきた勇者。傷だらけになり、動けなくなりながらも最期の最後まで自分を翻弄した男。そんな勇者に魔王は心の何処かで敵わないと思っていた。それは今の男にとっても同じで、小さな溜息を吐きながらも『それもそうだな』と小さく頷いた。
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