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しおりを挟む「───さぁ。おいで」
その日の夜。また夢を見ていた。でも、いつもの暗い部屋じゃない。目の前には、あの大きな祠が建っていた。
「ここは…」
呆然とその祠を見ていると、後ろから鈴の音が聞こえた。
シャリン!
振り返ると、そこには大勢の人が立っていた。その人達は皆、時代劇にでも出てきそうな着物を纏い、険しい表情で祠を見つめていた。その中にいた宮司の格好をした人物が、御札のような文字の書かれている白い紙で顔を隠している巫女姿の子供を僕の目の前に連れて来て頭を下げると一言告げた。
「神の贄に何卒、慈悲を……」
シャリン!
また鈴の音が聞こえると、巫女姿の子供が僕に近づき重なった。その時、その子供の記憶が頭の中で蘇る。
「生活が貧しくて……」「村の災害が酷いんだ!」「神社に供物を…」「贄を欲しているのだ」「いやぁああ!私の子よ!!返して頂戴ッッ!!」「母様ーー!!」「村を救うためじゃよ」
「さぁ、おいで……?」
気付くと、僕の視界は何かで塞がれており、それを取り払うと目の前にはあの男が立っていた。
「あぁ、私の可愛いヒトの子よ。恐れる事はない」
男は優しい顔を見せながら、僕に手を差し出す。僕の体はいつの間にか巫女の子供と入れ替わり、僕は自然と男に手を伸ばしていた。刹那、背後から何かが近づく気配の後、僕は頭に衝撃を喰らい気を失った。
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