1 / 1
罰ゲーム
しおりを挟む
いつもトランプゲームで負けている友人がいた。
なのにソイツは負けてもへのかっぱで、なかなかにつまらない男だった。
ある時、その友人と放課後たまたま残っていたので、またトランプゲームをして遊んでいた。
案の定、友人はそこまで強くない俺にさえ負け続けた。
そして負けたことをヘラヘラと笑っていたので、俺はある提案をした。
「じゃあさ、今度は罰ゲーム付きでやろう!」「罰ゲーム?」「あぁ。負けた方が相手の言うことを何でも聞くんだ!」
その提案に友人は暫く何かを考えた後、承諾した。
これで少しは楽しめる。
俺はそう期待した。
勝負するゲームはババ抜き。
俺はトランプを切り、自分と友人に配り終えると、手札を見る。
どうやらjoker【ババ】は友人の手札にあるようだ……。
同じ数字を省いて余ったカードを広げると、友人も同じくカードの裏面を此方に見せている。
「じゃあ、始めるか!」「いいよ」
ジャンケンをして俺が勝ち、友人のカードを引いた。
そうして互いにカードを引き合い、順調にラリーが続く。
手札が徐々に無くなっていくと、段々と緊張が走り出す。
今の今までババは引いてない分、余計に慎重になった。
何より、友人の雰囲気が何時もに比べて真剣味を帯びていた。
そりゃあ、誰だって罰ゲームは嫌だろう……。
だから友人も必死なんだと確信した。
とうとう、手札に残るカードは二枚。
友人のカードから一枚引くと、現れたのは望んじゃいないババだった。
一枚多くなってしまった手札を切って翳し、ポーカーフェイスを装い友人を見据える。
友人は手を伸ばしてカードを選ぶ。
指先が二三回カードの上を行き来した後、一枚を掴んだ。
その瞬間、俺は喉を鳴らした。
友人の指が掴むカード、それはまさしくババだった。
悟られないよう、わざと顔を険しくさせる。
後が無い俺にとって、ババだってバレさせなければ此方にもまだチャンスがあるからだ。
今か今かと友人が引くのを待ちわびていると、友人は何を思ったのか、指を一瞬放して小さく呟いた。
「……ホントはね、もう分かってるよ」「えっ…?」
友人の手が一枚のカードを引いた。
「でも、今は負ける気ないから……!」
そう言った友人の手にはハートのエースがこれ見よがしに翳されていた。
「なっ…!」「ホント、君って分かりやすいよね?」
積み重なったトランプに放り投げた友人は不適な笑みを浮かべる。
「何回もやってるウチにだいたいの癖が分かってくるんだよ。その中で見つけたのは君の顔芸と喉を鳴らす仕草かな?」「ッ……」「ババに触れた時に喉を鳴らしたでしょ?そして違うカードであるかのように顔を歪ませた」
そこまで読まれていたとは……。
苦虫をかみつぶしたような顔をすると、友人に『悔しそうだね?』と心を読まれた。
「うるせー!!ていうか、そんな癖が分かってんならいつでも勝てるじゃんか!なんでいつも負けてヘラヘラしてんだよ!?」「だって、たかがゲームだし……ムキになるような事でもないだろ?」
大人な反論に返す言葉が見つからない。
無言になる俺を余所に、友人は散らばっているトランプを掻き集めて束ねると、机上に置いて頬杖をつきながら笑顔で見つめてくる。
「な、何だよ……」「さて、勝負も着いたことだし。早速始めますか!」「は?」
何を、と聞く間もなく。
友人は立ち上がり俺に近づいて、いきなりキスをした。
「んン”ッ……!?!!」
思わず友人を押し退け文句を言う。
「なっ、何すんだよ!」「罰ゲームだろ?」
しれっと告げる友人に俺は開いた口が塞がらない。
「何でも言うこと聞くんだよねー?」「えっ、いや、あの……」
少し苛立った様子で近づいてくる友人に若干恐怖を覚えた俺は、後ずさりながら間合いを取る。
だが、背後には壁があり、すぐに追い詰めらてしまった。
「君が言ったんだよ?罰ゲームするってさぁ……」「いっ…言ったけど、たかがゲーム如きにムキにならないんじゃ無かったっけぇ?」「それとこれとは別だよ。だって─────」
罰ゲームなんて都合の良いモノ、わざわざ逃す奴いると思う?
そう笑顔で告げた友人にひん剥かれて美味しく食べられた俺は、それ以来ゲームが恐怖症となった……。
end
なのにソイツは負けてもへのかっぱで、なかなかにつまらない男だった。
ある時、その友人と放課後たまたま残っていたので、またトランプゲームをして遊んでいた。
案の定、友人はそこまで強くない俺にさえ負け続けた。
そして負けたことをヘラヘラと笑っていたので、俺はある提案をした。
「じゃあさ、今度は罰ゲーム付きでやろう!」「罰ゲーム?」「あぁ。負けた方が相手の言うことを何でも聞くんだ!」
その提案に友人は暫く何かを考えた後、承諾した。
これで少しは楽しめる。
俺はそう期待した。
勝負するゲームはババ抜き。
俺はトランプを切り、自分と友人に配り終えると、手札を見る。
どうやらjoker【ババ】は友人の手札にあるようだ……。
同じ数字を省いて余ったカードを広げると、友人も同じくカードの裏面を此方に見せている。
「じゃあ、始めるか!」「いいよ」
ジャンケンをして俺が勝ち、友人のカードを引いた。
そうして互いにカードを引き合い、順調にラリーが続く。
手札が徐々に無くなっていくと、段々と緊張が走り出す。
今の今までババは引いてない分、余計に慎重になった。
何より、友人の雰囲気が何時もに比べて真剣味を帯びていた。
そりゃあ、誰だって罰ゲームは嫌だろう……。
だから友人も必死なんだと確信した。
とうとう、手札に残るカードは二枚。
友人のカードから一枚引くと、現れたのは望んじゃいないババだった。
一枚多くなってしまった手札を切って翳し、ポーカーフェイスを装い友人を見据える。
友人は手を伸ばしてカードを選ぶ。
指先が二三回カードの上を行き来した後、一枚を掴んだ。
その瞬間、俺は喉を鳴らした。
友人の指が掴むカード、それはまさしくババだった。
悟られないよう、わざと顔を険しくさせる。
後が無い俺にとって、ババだってバレさせなければ此方にもまだチャンスがあるからだ。
今か今かと友人が引くのを待ちわびていると、友人は何を思ったのか、指を一瞬放して小さく呟いた。
「……ホントはね、もう分かってるよ」「えっ…?」
友人の手が一枚のカードを引いた。
「でも、今は負ける気ないから……!」
そう言った友人の手にはハートのエースがこれ見よがしに翳されていた。
「なっ…!」「ホント、君って分かりやすいよね?」
積み重なったトランプに放り投げた友人は不適な笑みを浮かべる。
「何回もやってるウチにだいたいの癖が分かってくるんだよ。その中で見つけたのは君の顔芸と喉を鳴らす仕草かな?」「ッ……」「ババに触れた時に喉を鳴らしたでしょ?そして違うカードであるかのように顔を歪ませた」
そこまで読まれていたとは……。
苦虫をかみつぶしたような顔をすると、友人に『悔しそうだね?』と心を読まれた。
「うるせー!!ていうか、そんな癖が分かってんならいつでも勝てるじゃんか!なんでいつも負けてヘラヘラしてんだよ!?」「だって、たかがゲームだし……ムキになるような事でもないだろ?」
大人な反論に返す言葉が見つからない。
無言になる俺を余所に、友人は散らばっているトランプを掻き集めて束ねると、机上に置いて頬杖をつきながら笑顔で見つめてくる。
「な、何だよ……」「さて、勝負も着いたことだし。早速始めますか!」「は?」
何を、と聞く間もなく。
友人は立ち上がり俺に近づいて、いきなりキスをした。
「んン”ッ……!?!!」
思わず友人を押し退け文句を言う。
「なっ、何すんだよ!」「罰ゲームだろ?」
しれっと告げる友人に俺は開いた口が塞がらない。
「何でも言うこと聞くんだよねー?」「えっ、いや、あの……」
少し苛立った様子で近づいてくる友人に若干恐怖を覚えた俺は、後ずさりながら間合いを取る。
だが、背後には壁があり、すぐに追い詰めらてしまった。
「君が言ったんだよ?罰ゲームするってさぁ……」「いっ…言ったけど、たかがゲーム如きにムキにならないんじゃ無かったっけぇ?」「それとこれとは別だよ。だって─────」
罰ゲームなんて都合の良いモノ、わざわざ逃す奴いると思う?
そう笑顔で告げた友人にひん剥かれて美味しく食べられた俺は、それ以来ゲームが恐怖症となった……。
end
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる