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しおりを挟む『彼に中身を見られたら一貫の終わりだっ……!!』
その想いが僕の体を突き動かした。突発的に始まった鬼ごっこは、校内全体を一周する壮大なモノとなった。クラス前の廊下から始まり、体育館、校庭、屋上と、下から上まで駆け回る。いつもならそんなに走れない僕だが、この時だけは不安が疲れを上回り、ずっと彼を追い掛けていられた。彼も僕が着いてくるのを確認しながら足を走らせ、着かず離れずの距離を保ちながら放課後の追いかけっこを堪能していた。それから数十分間彼との攻防戦が続いた末に僕のスタミナが途中で限界を迎えた。勢いが失速して走っていた足がもつれだす。呼吸も苦しくなり、上手く酸素を吸えずにハァハアと荒い息使いになる。彼の背中はそんな僕を置き去りにどんどん遠ざかり見えなくなった。
『そういえば彼の足、速かったっけ……』
前に体育大会でリレーのアンカーを勤めて見事一位に輝いていた事を思い出し、僕はその場にへたり込んだ。最初から敵う相手では無かった。深く息を吸い溜め息の如く吐き出す。もう見えない彼を諦め、僕は教室へと向かった。
しかし、僕の心にはまだ一物の不安が居座り続けていた。
「中身を見られていたらどうしよう。絶対変な目で見られるよ……」
仕方の無い文句をタラタラ垂れながら、ようやく着いた教室の扉を開いた。
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