夢か現か…

冬生まれ

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「今、神社の前の石階のところだけど…お前、何処にいる?」
「はぁ?いや、俺もそこに……」
「人が沢山来てるけど、お前らしき奴いないぞ?」
「えっ…?」

確かに親友の電話越しには人の声が聞こえていた。

「お前、ホントに来てるのかよ?」

俺は辺りを見渡し、息を呑む。

そうだ。

初めからおかしいと思ってたんだ。

「あ…あのさぁ、此処って××神社だよなぁ?」
「そうだけど?」
「周りにはどれぐらい人がいる?」
「さっきよりもけっこう増えたぞ?」
「……」
「おい、どうした?」

電話の呼び掛けを無視して俺はその場にしゃがみ込んだ。

確かに此処は祭りが開催されている神社で。

だけど、人っ子一人いやしない。

親友の電話越しには賑やかな声が聞こえていて。

俺の処は祭り囃子だけが静かになっている。

そう。

初めから気付くべきだった……。

「もしもし?おい!」
「あ……もしもし」
「どうしたんだよ?何かあったのか!?」

心配そうに訊ねてくる親友。

「あ、あのなぁ…俺、」

俺は事実を打ち明けた。

「迷ったみたいなんだ……」
「は?」
「多分、別の世界に」

だって此処には────最初から誰もいなかった……。
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