雨

雨

ざんざん降りの大雨が体育館倉庫にまで聞こえるなか、俺達は学ランを脱ぎ捨て抱き合っていた。

「長谷川くんっ…」「中満…ｯ」

埃っぽいマットの上に押し倒し、色白の肌に愛撫すれば中満【なかみち】は甘い声を響かせる。

普段はそこまで騒がしい奴じゃない。

怪我をした時だって泣き言を言わない奴なのに。

「なによがってんだよ。気持ち良いのか？」「ん…フフッ、まあね？」

骨を浮かせたその躰に鬱血痕を大量に鏤めながら淫猥に笑う中満は何とも官能的で、貪るほど気持ち良さげに喘いだ。

「ぁ…長谷川くん、気持ち良い……」「そうかい」「ねぇ、もっとして？」

腕を伸ばしてしがみついてくる中満を俺は要望通りに犯してやった。中満に自身を納め、我武者羅に突きまくる。その度に中満は啼いてよがって、俺の背中に傷をつけた。

「長谷川く…僕、もう……」「ｯ…中満、出すぞ！」

中満の中でぶちまけると、中満は満足そうに自身の腹を撫でた。

「ｯ…フフ。いっぱい出たね？」「ハァ…何喜んでんだよ、お前……」

疲れ果てて中満に覆い被さると、中満は俺に甘えてくる。頭を撫でられたり、頬をすり寄せられるのは意外と嫌いじゃない。

「なんでだと思う…？」「知るかよ」

中満が俺の頬に手を当てて笑いながら呟いた。

「ただ…嬉しいだけだよ。君とこうしている時が……一番」

俺らは普段、他人のふりをする。

一度も口を利かずに、目も合わせる事も無い。

クラスメイトだってのに関わる事をしなかった。

そう振る舞うしか術はなかった。

そうやって、周りの目を欺いて……。

だけど。

中満の目から涙が落ちた。

「……悪ぃ」

涙を拭ってやっても次から次へと溢れだす。

「いいんだ。気にしないで……僕らは普通じゃないんだ。当たり前の事さ」

抱き締めてやると、中満は掠れた声で嗚咽を漏らした。

「ツライよな…こんな関係のままじゃ。なんならいっその事……」
「大丈夫だよ。僕は大丈夫……」

この関係を知られるのが怖くて二人で隠した。

大丈夫だからと、中満は笑っていた。

そして俺は────。

「苦しいなぁ…お前も、俺も」

泣きながら縋り付く中満を抱き締めながら、俺はぼんやりと雨の音聞いていた。

ザァザァと降り続く雨は、止むにはまだ時間がかかりそうだ。






end