放課後のオバケ

冬生まれ

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「お前……!」

すぐさまオバケに近付くと、オバケは申し訳なさそうに謝った。

「今まで会えなくてゴメンね……」「たくっ、何してたんだよ。お前は地縛霊だろ?」「僕にもよく分からなくて……でも、また会えて嬉しいよ」

オバケは微笑みながら告げる。俺もつられてフッと笑みが溢れた。

「まっ、これで最後だけどな?」「……もう会えないんだね」「おう」

寂しそうに俯くオバケに手を差し出す。

「…ん」「何?」「握手だっ!」

不思議そうに見つめるオバケに、俺は手を出すように催促した。

「はよしろ!」「でも……」「いいから!!」

躊躇うオバケに手を突き付けると、オバケは恐る恐る手を差し出した。その手は透明で触れられそうになかったが、気にせず掴む仕草をする。

「……触れられないのに」「これでも握手してんのと変わらねぇだろ?」「フフ。まぁね…」

オバケも俺の手を掴む仕草をすると、不思議と手を握られる感覚を覚えた。

「ホントに握られてるみたい……」「お前もそう思うか?」「君も?」

それはオバケも同じだったらしく、互いの手を触わり合う。

「わぁ。初めて君に触れられた!」「最後の最後でコレかよ……」

オバケの手を握りながらぼやくと、オバケは俺の手を両手で包み込むように握り返した。

「僕は良かったよ。最後に君に触れられたんだもの…」

みると、オバケの躰は徐々に消えかけていた。

「お前…体が」「うん」

オバケは何かを悟った様に、俺の顔を見つめながら笑顔で告げる。

「今まで楽しかったよ。こんな“オバケ”に付き合ってくれてありがとう……」「あぁ。俺もだ」

じゃあな────そう言おうとした時だ。オバケの顔が一瞬、口の上から頭までハッキリと目に映る。

「じゃあね、バイバイ!」

別れを告げたオバケは既に見えなくなっており、俺はその時初めてオバケの正体を知った……。
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