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しおりを挟む次の日の放課後、暗くなってからまたオバケを呼んでみる。しかし昨日と同様にオバケは姿を現す事なく、時間だけが過ぎていった。暫く粘ってみたものの八時を過ぎた頃、仕方なく切り上げた。それからというもの、放課後残ってはオバケを呼ぶだけの日々が続いた。
「おーい…まだ居ないのか?」
毎日の様に暗い教室には俺の声だけが虚しく響く。季節はとっくに夏が過ぎ去り、秋が訪れていた。
「なぁ、いつになったら姿を見せてくれんだよ……」
誰もいない教室で独り言をぼやいてみるが、誰からの返事も返って来ず、溜め息を吐いては扉を閉めた。
あれ以来、オバケはパッタリと姿を見せなくなった。それと同時に、あの夢もみなくなっていた。俺は未だに不思議でならなかった。何故オバケは姿を現さなくなったのか、そして何故あの夢をみなくなったのか……。
それから暫くして冬がやって来た。しかし、オバケの姿は相も変わらず何処にもいなかった。
「おい」
季節は冬を越し、瞬く間に春が訪れた。俺は未だに放課後残ってオバケを呼んでいた。
「今日もいねぇのか……?」
再度問い掛けるが、状況は変わらない。辺りを見渡し、溜め息混じりに呟いた。
「冬休みも一日欠かさず来てやったつーのによぉ……」
文句を言いながらいつもの席に座った。よく足をプラプラさせながら、目の前で話を聞いていたオバケを思い出す。
「……もうすぐクラス替えだ。この教室に居るのもあとわずか。お前と放課後残って話すのもこれで終いだ」
静まり返る教室に俺の声だけが響いて消えた。それから辺りを見渡し、何も起こらないのを確認してから席を立つ。カツ、カツと足音が教室に響くなか、俺の背後からそれは聞こえた。
「新……生…くん」「!?」
微かな声で名前を呼ばれた気がした。振り返ると、暗闇の中にオバケの姿があった。オバケはただぼんやりと立ち尽し、俺を見つめていた。
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