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しおりを挟む遠くの方で声が聞こえた。何かあったのかと目蓋を開けると、白い天井が視界に入る。
「こ、こは……?」
辺りを見渡す。周りには薄手のカーテンが垂れ下がっており、僕はベッドの上で横になっていた。此処は保健室だ。薬品の匂いが微かに匂う。
暫くすると、扉の開閉音と共に足音が此方に近づき、垂れ下がるカーテンを開けて顔を覗かせたのは、保健医の先生だった。
「おっ!起きてたー?もう午後の授業は終わったから帰っても大丈夫よ」
「あっ……スイマセン、ありがとう御座います」
「いいえ!」
先生は手に持っていた僕の鞄を手渡してくれた。
「はいコレ。お友達が用意してくれたのよ?明日にでも御礼言っときなさいね」
「はい。あの……」
「ん?」
「僕は一体、階段から落ちた処までは覚えているんですけど……」
階段から落ちた後、何があったのか全く覚えていなかった。それを先生に訊ねると、簡易的に話してくれた。
「あぁ。その後ね、君のクラスメイトが担いで此所へ運んでくれたの。血相欠いて来たからコッチもビックリしたわよ!話を聞けば階段から落ちた君をキャッチしたって聞いて……二人共外傷はなかったし、君は気を失っていたからそのまま寝かせてたのよ」
「そっ、そうですか」
僕が気を失っていた時にそんな事になっていたなんて。そう呆然としながら聞いていると、あの時一瞬聞こえた声を思い出した。
「あ……あの、その運んでくれた人の名前とか」
「それが、君を送り届けてすぐに教室に戻っちゃったのよ」
「そう、ですか……」
「それじゃあ気をつけて帰りなよ!もし、何処か痛いとか症状出てきたら病院へ行きなさいよ?」
「はい」
結局、助けてくれた人が誰なのかは分からぬまま僕は保健室を後にした。廊下に連なる窓からは、西日で真っ赤に染まる空に烏が数羽で飛び去っていくのが見えた。静かな廊下では人ひとりすれ違う事なく、僕は学校を出て帰路につく。
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