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片割れ心中
しおりを挟む数日前の事だ。
近くの草原で、男子○学生が遺体となって発見された。
テレビの情報によると、遺体には衣服の乱れとコードのようなモノで首を絞められた跡があり、少年は何者かに乱暴された後、絞殺されたらしい……。
警察は未だに犯人を捜しているそうだ。
そんな事とはつゆ知らず、目の前に横たわる少年……否、彼は自分の事なのに素知らぬ様子で安らかに眠っている。
白い着物を身に纏い、白い布団で寝かされて、これまた白い布で顔は覆われている。
その布に両の手をかけてめくり上げると、蒼白い顔で静かに目蓋を閉じていた。
死に化粧をしているせいか、生前と何ら変わり映えしないその顔は、ただ眠っている様にも伺える。
彼の顔をまじまじ見つめると彼が今にも起きだしそうな気がして、ふと名前を呼んだ。
しかし、彼はそれに答える事は無い。
首筋に浮かぶ薄らとした紅い痣を見つけてそっと撫でた。
彼は生前、かなり過敏な神経を持っていたらしく、少し触れただけでもこそばゆいのか、嫌がる素振りをみせていた。
それなのに今は首を撫でてみても反応は返ってこない。
それがとても寂しく思えて指先を静かに離す。
嗚呼、彼は何故、死んでしまったのか……。
草原に横たわる彼の色白い肌が頭を過ぎる。
嗚呼、彼は何故、俺を置いて行ってしまったのか……。
服を乱して俺の躰に縋りつき、汗ばむ躰に朱色を交えて息を吐き。
嗚呼、彼は何故、あの時自ら×を望んだのか……。
手に握られたイヤホンコードを此方に渡して、こう言った。
「ねぇ、××して……」
首に巻き付けたイヤホンコードをグッと縛ると、彼は言葉にならない息を吐く。
しがみつく手は掻きむしるように苦しみ、俺を映す瞳は泪で滲む。
それから数分もしない内に、力無く離れた手は俺から剥がれて彼は最期に笑って逝った。
嬉しかったのか、哀しかったのか。
それすら訊く事叶わずに、ズルリと落ちた手は草に紛れて動かなくなった……。
───線香の香りが立ち込める。
眠り続ける彼の抜け殻にあの日の彼を重ねた。
俺を見つめていたあの瞳も、俺にしがみつくあの手も、俺に笑い掛けてくれたあの唇も、、もう動く事はないのだと自身の唇を重ねる。
「じゃあ、またな……」
別れを含めた最期の口吻は、哀しくなるほど冷たかった……。
【片割れ心中】
後で俺も逢いに逝くから、その時全てを教えて欲しい。
end
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