クライウタ

冬生まれ

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鍵の掛かったトビラ

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ブルーシートで覆われた遺体が運ばれるのを見つめていた刑事は、今回の事件について深妙な面持ちで告げる。

「しかし、何とも奇妙な事件だなぁ……」
「何がですか?」

刑事見習いが訊ねると、顎に手をやる刑事が訝しげに呟いた。

「あの仏さんの事だよ」
「あぁー、布団にあった筈の遺体がオモチャ箱の中に入ってた事ですか?」

刑事見習いは、さほど気にしてない様子で告げる。

「容疑者の勘違いだったんじゃないですか?捕まえた時もかなり混乱していた様子だったし」
「はぁー?お前、何処に布団の中とオモチャ箱の中を勘違いする奴がいんだよ……」
「それか被害者がまだ生きていたとか?」
「まぁ、そっちの方が妥当か。後は司法解剖でわかる事だし。だが、しかし──────」

それでもまだ腑に落ちないのか、刑事は意味有りげな言葉を吐いた。

「あんな顔した仏を拝むなんてなぁ……」

タキシードを着た大きなクマのぬいぐるみに、まるで抱き締められているかの様な格好で、その少年は幸せそうな表情を浮かべて目を瞑り横たわっていた。

その周りには、赤い花柄の服を着た少女の布人形や四角い頭をしたロボット、中からピエロが飛び出しているビックリ箱や、スタイルのいいドール人形とパトカーのオモチャが少年に寄り添う形で其処にあった。

まるで、今まで遊んでいたような──────その遺体は、とても悲劇的な最期を迎えたとは思えないほど穏やかなモノだった。

「まぁ、最期に苦しまず逝けただけマシなのか知れねぇな」

刑事はそう呟くと、事件現場を立ち去った。
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