クライウタ

冬生まれ

文字の大きさ
上 下
25 / 42
鍵の掛かったトビラ

しおりを挟む

うす暗い部屋だった。

カーテンは閉ざされ、四角い箱型のテレビにゴミが散乱しているテーブルが置いてあるだけの散らかった1LDK。

「此処は……」

トビラからゆっくり手を放し、暗い部屋へと足を踏み入れると、カラリと飲み干された酒の空き缶が足に当たった。

床にもゴミが広がり、その真ん中には一式の布団が敷いてある。

何とも言えぬ匂いと異様な雰囲気に、顔が自然と歪んだ。

すると突然、頭の中に何かが蘇る。

見知らぬ男が居た。

男は僕に覆いかぶさり、何かを喚いて。

それから──────。

「オエェッ……」

急に気持ち悪さが込み上げて、思わず吐いた。

布団を吐瀉物で汚し、その場に蹲る。

不思議な事にテレビか勝手につき、砂嵐が映し出された。

その間々には、歪んだ顔の女性と断片的な言葉が聞こえた。

『きょ…めい…○✕……の……い、で……行く…だ…ゆ、くん……で』

ニュース番組なのだろう。

何処かで見た風景が映し出され、黄色い立入禁止と書かれたテープと、制服を来た人達が沢山テレビに映っていた。

それを呆然と見つめていると、ブンッという音と共にテレビが消された。

暗くなった画面には、僕の他に背後に立つタキシードの男が映し出されていた。

「あっ……」

振り返ると、タキシードの男は片手に持つリモコンをそこら辺に放り投げ、僕を見つめる。

「帰るぞ」
「え?」
「アチラに帰るぞ。ゆうま」

タキシードの男は、僕が出てきた扉を指差し手を差し出す。

「でも……」

躊躇いがちに暗い部屋を見つめると、タキシードの男は僕を抱き上げた。

「此処はいい処じゃない」
「どうして?」
「いいモノなんて何にもないからだ……それよりもかくれんぼの続きをしよう。みんな待ってるぞ?」

タキシードの男は無表情のまま、僕を抱えて戻ると、ガチャリと扉を閉めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

一宿一飯の恩義

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 妹のアイミが、一人暮らしの兄の家に泊まりに来た。コンサートで近くを訪れたため、ホテル代わりに利用しようということだった。 兄は条件を付けて、アイミを泊めることにした。 その夜、条件であることを理由に、兄はアイミを抱く。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...