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鍵の掛かったトビラ
⑤
しおりを挟むうす暗い部屋だった。
カーテンは閉ざされ、四角い箱型のテレビにゴミが散乱しているテーブルが置いてあるだけの散らかった1LDK。
「此処は……」
トビラからゆっくり手を放し、暗い部屋へと足を踏み入れると、カラリと飲み干された酒の空き缶が足に当たった。
床にもゴミが広がり、その真ん中には一式の布団が敷いてある。
何とも言えぬ匂いと異様な雰囲気に、顔が自然と歪んだ。
すると突然、頭の中に何かが蘇る。
見知らぬ男が居た。
男は僕に覆いかぶさり、何かを喚いて。
それから──────。
「オエェッ……」
急に気持ち悪さが込み上げて、思わず吐いた。
布団を吐瀉物で汚し、その場に蹲る。
不思議な事にテレビか勝手につき、砂嵐が映し出された。
その間々には、歪んだ顔の女性と断片的な言葉が聞こえた。
『きょ…めい…○✕……の……い、で……行く…だ…ゆ、くん……で』
ニュース番組なのだろう。
何処かで見た風景が映し出され、黄色い立入禁止と書かれたテープと、制服を来た人達が沢山テレビに映っていた。
それを呆然と見つめていると、ブンッという音と共にテレビが消された。
暗くなった画面には、僕の他に背後に立つタキシードの男が映し出されていた。
「あっ……」
振り返ると、タキシードの男は片手に持つリモコンをそこら辺に放り投げ、僕を見つめる。
「帰るぞ」
「え?」
「アチラに帰るぞ。ゆうま」
タキシードの男は、僕が出てきた扉を指差し手を差し出す。
「でも……」
躊躇いがちに暗い部屋を見つめると、タキシードの男は僕を抱き上げた。
「此処はいい処じゃない」
「どうして?」
「いいモノなんて何にもないからだ……それよりもかくれんぼの続きをしよう。みんな待ってるぞ?」
タキシードの男は無表情のまま、僕を抱えて戻ると、ガチャリと扉を閉めた。
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