クライウタ

鍵の掛かったトビラ

②

「ねぇ、ゆうま」
「なーに？ハナちゃん」

目の前の女の子はいつもの口調で言う。

「今日は何して遊ぼーか？」

ニコニコと笑うハナちゃんは、首を傾げて僕を見る。

「そうだなぁ……じゃあ、かくれんぼ！」
「いいね。それじゃあ他の子達も誘ってやろう！」

長い黒髪を靡かせ、花柄の赤いワンピースがふわりと舞う。

僕の腕を引っ張り、ハナちゃんは皆の処へと連れて行く。

「ねぇ、今からゆうまと遊ぶんだけど一緒に遊ばない？」
「はぁあ？遊びたきゃ勝手に遊べよ」

そう言ったのは、べぇと舌を出す赤毛の道化師だ。

「遊ぶ時は人数が多いほうが良いじゃない？」
「それもそうですね。では、私もやりましょう」

頭の四角い男は、丸い眼鏡を指で押し上げる。

「お願い。一緒に遊んでよ！」
「しょうがないわねぇ……一回だけよ？」

美人なモデルのお姉さんは、腰に手を当て承諾した。

「ゆうまとかくれんぼするの！」
「そうなんだ。なら、僕も一緒に遊ぼうかな？」

紺色の制服に帽子をかぶる青年は、楽しそうに仲間に加わる。

続々と仲間が集うなか、最後に加わったのは彼だった。

「皆と一緒にかくれんぼするのよ？」

ハナちゃんがそう告げると、男は告げた。

「ならば、オレも加わろう……」

タキシードに赤いリボンをつけた背の高い茶髪の男だった。

「なぁ、ゆうま」
「うん。いいよ」

彼は黒い瞳で僕を見据える。

「それじゃあ、いくよー！」

じゃんけんポイッと、僕が負けた。

「ゆうまがオニね！」
「うん」
「１０数えたら探しに来るのよ？」
「うん」

目を閉じて数を数える。

「いーち、にーい……」

皆の離れて行く足音を聞きながら、僕は静かに口ずさむ。

「はーち、きゅーう、じゅう！」

目を開けて、長い廊下を駆け出した。

何個もある扉を一つずつ開けては、中を確認する。

「ハナちゃーん？」

名前を呼んで部屋の中を探して歩く。

「赤毛さーん？」

ベッドの下やクローゼットの中。

「四角さーん！」
「おねぇさーん？」

カーテンの隙間やバルコニーも。

「制服さーん」

それからテーブルや机の下もくまなく探した。

けれどもみんな見つからない。

「何処に隠れてるの……？」

キョロキョロと辺りを見渡し、廊下を歩く。

「みんな何処に行ったの？」

ガチャリ、ガチャリと扉を開けて行くと。

「ねぇ……あっ！」

ガチャリと開いた扉の先にソレは落ちていた。

鈍く光るトビラの鍵。

「これなら開くだろうか……？」

手に持ち透かさず走り出す。

前々から気になっていたんだ。

此処に来た頃からずっと。