クライウタ

冬生まれ

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■■の幸せ

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「ねぇ、■■サマ」

「なんだい?」

「どうして■■サマは“あの子”を返してあげないの?」

手前よりも背の大きな■■サマに訊ねたところ、■■サマは悲しげな顔をします。

「■■サマならみんなの願いを叶える事が出来るでしょう?」

そうお訪ねしたところ、■■サマは静かに告げました。

「いくら私でも“あの子”を返してあげる事が出来ないんだよ」

「どうして?」

「そういう約束だからね」

「約束?」

■■サマは微笑みながら、手前の手を引いて歩きます。

「そう。その昔、この村で嫌われていた“あの子”を贄に捧げる約束をしたのがあのヒト達なんだ」

「にえ……生贄ってこと?」

「そうだよ」

■■サマは、何処か冷たい眼をしておっしゃいます。

「あの子は少し変わっていてね……皆“あの子”の事をイジメていたんだ」

「可哀想だね……」

「だから私が“あの子”を生贄というカタチで助けてあげたんだよ。彼処よりはマシだからね?」

「そうだったんだ」

■■サマはゆっくりと歩みながら、手前を引き連れて中庭を散歩します。

今の時期は、池に睡蓮が咲いており、とても綺麗だ。

「じゃあ、今“あの子”は……?」

「とても元気にしているよ」

「そっか、なら良かった!」

自分は■■サマの手を握り、一緒に隣を歩きます。

『あの子は何処ですか?』

『あの子を返して下さい』

未だに聞こえるあのヒト達の声は、今日も止まない。

『あの子は……あの子は……』

■■サマは、それらを遮る様に自分に言い聞かせます。

「だからね、あのヒトらの言葉に耳を貸す必要はないんだよ」

『あの子を返して!!あの子は、***は、ワタシの──────』

あのヒト達の声から遠ざかる最中、何処かで聞いた言葉を耳にした。
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