45 / 52
12.義妹の誕生日です。
12-2
しおりを挟む
1週間て短いと思う。1週間が短いんだから、1ヶ月もあっという間なわけで。
義妹の誕生会で、私は人形のように綺麗な格好をして人形のようににこにこ微笑んでいる。
内心? 帰りたくてたまらない。
父親の会社の人とか、取引先の人に笑顔で挨拶ばかりしてたから表情筋が痛いし。毎年私より茉白の誕生会の方が豪華な事も、私のは家を出たからって今年は無かった事も全部どうでもいいから、こうして呼ぶのもやめてほしい。
今日は初雪さんは私の隣にいるけれど、視線はずっと茉白に向いている。今日私がここにいる意味を教えてほしい。別にいなくても成り立つよね?
幸せの最中にいるであろう私の義妹を遠い目で見つめながら、私は初雪さんに気づかれないようにため息をついた。
誕生日は、形式ばかりの大きな会よりお母さんに「おめでとう」って言われる方がずっと嬉しかった。
誕生日の朝、お母さんの病室に行くと優しい笑顔で「誕生日おめでとう。お母さんのとこに産まれて来てくれてありがとね」って抱き締めてくれるだけで嬉しかったんだ。
昔は隣にいる許嫁も優しい眼差しで祝ってくれた。いつの間にか、形式的なものになってしまったけど。
「姉さま! 姉さまもこっちで一緒にお話しましょ!」
花が咲いたような笑顔の茉白に手を取られれば、「行っておいで」と初雪さん。逃げ場のない私は曖昧に微笑んでされるがまま。
この華やかな場所にそぐわず、私の心は憂鬱だった。
早く、終わらないかな。
茉白とあの子が招待した何人かの友達に囲まれながら話を聞くのに疲れてきた頃。茉白が父親に呼ばれたのをいいことに、私はそっと会場から離れた人のいないところに避難する。
「ふぅ……」
やっと落ち着けそう。どうにも思ってないことを言ったり作り笑いをずっとしたりするのが私は苦手で、ただそこにいるだけでも結構疲れてしまう。
最近は初雪さんと茉白にも気を使ってばかりだったから余計に。
お母さんに会いたいな。なんの気も使わないで、私の全部を話せる唯一の人だった。私が引いた境界線の、唯一内側にいる人だった。
「ちぃがお母さんと違って健康な身体で良かった」と母は会う度に言っていた。
そしてその細い身体で私を抱き締めながら、「1人で生きてけるようになるんだよ? それと、人に決められた幸せは本当の幸せじゃないからね?」といつも私に言い聞かせていた。
お母さんは私に家を出てほしかったのかな? 思い返せば、初雪さんとの婚約の話もお母さんはいつも渋い顔をしていた気がする。
大人になったら初雪さんと結婚するのが当然の事なんだと思い込んでいた当時の私には、お母さんの言葉は難しかった。
そうだ、年が明ける前にお母さんのお墓にお参りに行こう。
「そこで何をしている?」
突然呼びかけられて、でも平静を装って振り返れば不可解そうな表情の初雪さんが立っている。
「あー……人の多さに少し酔ってしまって」
当たり障りの無い言葉と笑顔を返す。すぐいなくなるだろうと思ったのに、どういうわけか初雪さんは私の隣に腰掛けてきた。
「えっと……?」
「たしかに今日は人が多い。茉白を目に止める輩も多くなると考えると会場にも留まり辛くてな。」
あーなるほど……。つまり、そこにいると人に囲まれる茉白を見てられないから来たってわけね。初雪さんの方から近くに来たことに一瞬でも胸の高まりを覚えた私の気持ちは、スっと底に冷えていく。
……1人にしてほしいなぁ。
私の隣で初雪さんは茉白のことや家のことをずっと話してる。私に言われても分かんないんだけどなぁ。こういう催しが無ければ、こっちに全然顔出さなくなったし。
「──それで、その総会にも紅の息子は顔も出さないで」
ん?
「まったく、あんな奴が紅の跡継ぎなど考えられない。あの家も落ちぶれたものだな。」
あずき先輩の話かな?
目だけを隣の初雪さんに向ける。
「紅家の方にお会いすることもあるんですね。」
「ああ。父が今手掛けてる事業に向こうの家も関わっていてな。将来的には俺たちも関わる話だというのに、紅の長男は一度も姿を見せない。一体何をしているんだ。」
何って、遊んでますね。あの人は。
あずき先輩が何やってるって、遊ぶ以外何もしてないよ。受験勉強も学校にいる間しかしてないっぽいし。
そう言いたいところだけど、紅家と繋がりがあることを初雪さんに話すわけにもいかない。
「お会いしたことはあるんですか?」
「何度かな。あの人を馬鹿にしたような顔を忘れるわけがない。」
あー……。悲しいかな、簡単に想像がつく。
「そうでしたか。」
何て言ってみようもなく、それだけ返した。
私も聞こうとも思ってないし、あずき先輩からも話さないから紅家の事情は分からない。氷榁と仲が悪いせいで、初雪さんから入ってくる情報は一方向からのものでしかないし。
そんな話をして少しは気が紛れたのか、初雪さんはまた会場に戻っていった。
私はもう少しだけここにいよう。
義妹の誕生会で、私は人形のように綺麗な格好をして人形のようににこにこ微笑んでいる。
内心? 帰りたくてたまらない。
父親の会社の人とか、取引先の人に笑顔で挨拶ばかりしてたから表情筋が痛いし。毎年私より茉白の誕生会の方が豪華な事も、私のは家を出たからって今年は無かった事も全部どうでもいいから、こうして呼ぶのもやめてほしい。
今日は初雪さんは私の隣にいるけれど、視線はずっと茉白に向いている。今日私がここにいる意味を教えてほしい。別にいなくても成り立つよね?
幸せの最中にいるであろう私の義妹を遠い目で見つめながら、私は初雪さんに気づかれないようにため息をついた。
誕生日は、形式ばかりの大きな会よりお母さんに「おめでとう」って言われる方がずっと嬉しかった。
誕生日の朝、お母さんの病室に行くと優しい笑顔で「誕生日おめでとう。お母さんのとこに産まれて来てくれてありがとね」って抱き締めてくれるだけで嬉しかったんだ。
昔は隣にいる許嫁も優しい眼差しで祝ってくれた。いつの間にか、形式的なものになってしまったけど。
「姉さま! 姉さまもこっちで一緒にお話しましょ!」
花が咲いたような笑顔の茉白に手を取られれば、「行っておいで」と初雪さん。逃げ場のない私は曖昧に微笑んでされるがまま。
この華やかな場所にそぐわず、私の心は憂鬱だった。
早く、終わらないかな。
茉白とあの子が招待した何人かの友達に囲まれながら話を聞くのに疲れてきた頃。茉白が父親に呼ばれたのをいいことに、私はそっと会場から離れた人のいないところに避難する。
「ふぅ……」
やっと落ち着けそう。どうにも思ってないことを言ったり作り笑いをずっとしたりするのが私は苦手で、ただそこにいるだけでも結構疲れてしまう。
最近は初雪さんと茉白にも気を使ってばかりだったから余計に。
お母さんに会いたいな。なんの気も使わないで、私の全部を話せる唯一の人だった。私が引いた境界線の、唯一内側にいる人だった。
「ちぃがお母さんと違って健康な身体で良かった」と母は会う度に言っていた。
そしてその細い身体で私を抱き締めながら、「1人で生きてけるようになるんだよ? それと、人に決められた幸せは本当の幸せじゃないからね?」といつも私に言い聞かせていた。
お母さんは私に家を出てほしかったのかな? 思い返せば、初雪さんとの婚約の話もお母さんはいつも渋い顔をしていた気がする。
大人になったら初雪さんと結婚するのが当然の事なんだと思い込んでいた当時の私には、お母さんの言葉は難しかった。
そうだ、年が明ける前にお母さんのお墓にお参りに行こう。
「そこで何をしている?」
突然呼びかけられて、でも平静を装って振り返れば不可解そうな表情の初雪さんが立っている。
「あー……人の多さに少し酔ってしまって」
当たり障りの無い言葉と笑顔を返す。すぐいなくなるだろうと思ったのに、どういうわけか初雪さんは私の隣に腰掛けてきた。
「えっと……?」
「たしかに今日は人が多い。茉白を目に止める輩も多くなると考えると会場にも留まり辛くてな。」
あーなるほど……。つまり、そこにいると人に囲まれる茉白を見てられないから来たってわけね。初雪さんの方から近くに来たことに一瞬でも胸の高まりを覚えた私の気持ちは、スっと底に冷えていく。
……1人にしてほしいなぁ。
私の隣で初雪さんは茉白のことや家のことをずっと話してる。私に言われても分かんないんだけどなぁ。こういう催しが無ければ、こっちに全然顔出さなくなったし。
「──それで、その総会にも紅の息子は顔も出さないで」
ん?
「まったく、あんな奴が紅の跡継ぎなど考えられない。あの家も落ちぶれたものだな。」
あずき先輩の話かな?
目だけを隣の初雪さんに向ける。
「紅家の方にお会いすることもあるんですね。」
「ああ。父が今手掛けてる事業に向こうの家も関わっていてな。将来的には俺たちも関わる話だというのに、紅の長男は一度も姿を見せない。一体何をしているんだ。」
何って、遊んでますね。あの人は。
あずき先輩が何やってるって、遊ぶ以外何もしてないよ。受験勉強も学校にいる間しかしてないっぽいし。
そう言いたいところだけど、紅家と繋がりがあることを初雪さんに話すわけにもいかない。
「お会いしたことはあるんですか?」
「何度かな。あの人を馬鹿にしたような顔を忘れるわけがない。」
あー……。悲しいかな、簡単に想像がつく。
「そうでしたか。」
何て言ってみようもなく、それだけ返した。
私も聞こうとも思ってないし、あずき先輩からも話さないから紅家の事情は分からない。氷榁と仲が悪いせいで、初雪さんから入ってくる情報は一方向からのものでしかないし。
そんな話をして少しは気が紛れたのか、初雪さんはまた会場に戻っていった。
私はもう少しだけここにいよう。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる